発達障害プログラマーのコーディング術|特性を活かした開発テクニック集

「きれいなコードが書けない」「バグ探しが苦手」「マニュアルを読むのがつらい」
そんな悩みを抱えていませんか? 実は、発達障害の特性は、適切なアプローチを取ることで、プログラミングにおける強力な武器に変わります。
この記事では、ADHD・ASDの特性を持つプログラマーたちが編み出した、実践的なプログラミングテクニックをご紹介します。
プログラマー = コンピュータプログラムを作る技術者 コーディング = プログラムを書く作業
ADHD特性を活かすコーディング術
1. カラフルコーディング:視覚的刺激で集中力UP
絵文字とコメントで視覚的に区別する方法
プログラムを書く時、絵文字を使って重要度を視覚的に分かりやすくします:
- 🔥 重要な処理
- ⚡ 処理速度を重視する部分
- 🐛 バグ(不具合)を修正した箇所
- 💡 後でやること(TODO)
実際の使用例:
ユーザー認証の処理を作る場合:
🔥 ユーザー認証の核心部分
⚡ まずキャッシュ(一時保存)から確認(高速化)
🐛 修正済み: パスワードの暗号化を忘れていた
💡 TODO: エラー処理を改善する
さらに楽しくする工夫
コードエディタ(プログラムを書くソフト)で、絵文字に色を付ける設定:
- 🔥 は赤色で表示
- ⚡ は青緑色で表示
- 🐛 は黄色で表示
2. マイクロコミット戦略:小さな達成感の積み重ね
コミット = プログラムの変更を保存すること
❌ 悪い例: 「機能実装」という大雑把な保存
✅ 良い例:
- 「ユーザー情報の枠組みを追加」
- 「入力チェック機能を追加」
- 「テストプログラムを追加」
- 「見た目を整える」
効果:
- 達成感を頻繁に得られる
- ミスしても前の状態に戻りやすい
- 他の人もチェックしやすい
3. ポモドーロ駆動開発(PDD)
ポモドーロ = 25分作業・5分休憩のサイクル
25分で1機能を実装する設計
🍅 1ポモドーロ目(25分): 基本的な機能を作る 🍅 2ポモドーロ目(25分): コードをきれいに整理 🍅 3ポモドーロ目(25分): テストを追加
4. TODO駆動開発:先に日本語で設計
まず日本語でやることリストを書く
価格計算プログラムを作る場合:
やることリスト:
1. アイテムの合計金額を計算
2. 税金を追加
3. 割引を適用
4. 送料を計算
5. 最終金額を返す
その後、1つずつプログラムに変換していきます。
5. ゲーミフィケーション:楽しく続ける工夫
毎日の作業を記録してゲーム化
- 連続作業日数をカウント
- 新記録が出たらお祝いメッセージ
- GitHubの草(緑のマス)を育てる
- 週間目標を設定してクリアを目指す
ASD特性を活かすコーディング術
1. 完璧なコード規約:ルールの明確化
プログラムの書き方ルールを完全に定義
- 関数名(機能の名前): 動詞から始める(例:getUserInfo = ユーザー情報を取得)
- 変数名(データの名前): 名詞にする(例:userName = ユーザー名)
- 定数(変わらない値): 大文字とアンダースコア(例:MAX_RETRY_COUNT = 最大再試行回数)
- インデント(字下げ): スペース2つ
- 1行の長さ: 最大80文字
これらのルールを自動チェックツールで監視します。
2. パターン化:似た処理は完全に統一
工場のように統一された作り方
すべてのデータを同じ形式で作成:
- 必ずID(識別番号)を付ける
- 必ず作成日時を記録
- 必ず更新日時を記録
- 必ず種類を明記
例:ユーザー情報も投稿情報も、すべて同じ形式で管理
3. 詳細なドキュメント:未来の自分への手紙
プログラムの説明書を詳しく書く
ユーザー認証を行う機能の説明:
入力:
- メールアドレス(必須、正しい形式)
- パスワード(必須、8文字以上)
出力:
- 成功/失敗の結果
- ユーザー情報(成功時)
- エラーメッセージ(失敗時)
使い方の例:
メールとパスワードを渡すと、認証結果が返ってくる
エラーになる場合:
- メールアドレスが正しくない形式
- データベースに接続できない
処理の流れ:
1. 入力値をチェック
2. データベースからユーザーを探す
3. パスワードを照合
4. ログイン情報を作成
5. 結果を返す
4. テスト駆動:仕様の明確化
テスト = プログラムが正しく動くか確認する仕組み
先にテストで「こう動くべき」を定義
電卓プログラムの場合:
- 2 + 3 = 5 になるはず
- -1 + 1 = 0 になるはず
- 0.1 + 0.2 = 約0.3 になるはず
- 文字を入れたらエラーになるはず
これらのテストに合格するようにプログラムを作ります。
5. 不変性の追求:予測可能なコード
データを変更せず、新しく作り直す
❌ 悪い例:元のデータを直接変更
ユーザーの年齢を20歳から21歳に変更
✅ 良い例:新しいデータを作成
元のユーザー情報はそのまま残し、
年齢だけ21歳にした新しいユーザー情報を作成
共通テクニック:両方の特性で使える
1. ビジュアルデバッグ
デバッグ = プログラムの問題を見つけて修正する作業
見やすいデバッグ情報の表示
- 重要な情報は大きく赤文字で表示
- 🔍 マークを付けて目立たせる
- 表形式で整理して表示
- グループ化して階層的に表示
2. エラーハンドリングの工夫
エラーハンドリング = エラーが起きた時の対処
エラーの種類を分かりやすく分類
- ❌ 入力エラー:「入力値を確認してください」
- 🌐 ネットワークエラー:「インターネット接続を確認してください」
- 🔒 認証エラー:「ログインし直してください」
- ⚠️ システムエラー:「しばらく待ってから再試行してください」
3. 開発環境の最適化
プログラミング環境の設定
自動化設定:
- 保存時に自動でコードを整形
- エラーを自動で修正
- 括弧の対応を色分け表示
視覚的な補助:
- 対応する括弧を色分け
- インデントガイドの表示
- 目に優しい暗めのカラーテーマ
集中を助ける設定:
- 不要な通知をオフ
- 全画面モードの活用
- BGMの活用
フレームワーク別テクニック
フレームワーク = プログラミングを効率化するツールセット
React(ウェブアプリ開発ツール)の整理術
フォルダで視覚的に整理
プロジェクトフォルダ/
共通部品/
ボタン/
ボタンの見た目
ボタンの動作
ボタンのテスト
機能別/
ログイン機能/
ユーザー管理/
レイアウト/
ヘッダー/
フッター/
Vue(もう一つのウェブアプリ開発ツール)の活用
見た目・動作・スタイルを1ファイルにまとめる
1つのファイルに:
- HTML(見た目の構造)
- JavaScript(動作の処理)
- CSS(デザイン)
をまとめて書けるので、関連する要素が散らばりません。
デバッグテクニック
1. ラバーダック・デバッグ(説明駆動)
ラバーダック = ゴムのアヒル。誰かに説明するつもりで問題を整理
問題を言葉で説明して解決
問題:ユーザーリストが表示されない
調査手順:
1. データは取得できてる? → 確認 → OK
2. 画面に表示されてる? → 確認 → NG
3. 表示条件は正しい? → あ、データがまだ来てない!
原因:データ取得を待たずに表示しようとしていた
解決:「読み込み中」表示を追加
2. 二分探索デバッグ
問題のある範囲を半分ずつ絞り込む
プログラムの流れ:
開始 → ✅ 動いてる
処理A → ✅ 動いてる
処理B → ❌ ここで止まる!
処理C → 未確認
→ 処理Bに問題があることが判明
パフォーマンス最適化
パフォーマンス = プログラムの処理速度
メモ化で無駄な処理を削減
メモ化 = 一度計算した結果を保存して再利用
ADHD向け:シンプルなメモ化
- 計算結果を保存
- 同じ計算なら保存した結果を使う
- 「🚀 キャッシュから取得!」と表示
ASD向け:詳細な最適化
- 保存する最大数を設定(例:100個まで)
- 保存期限を設定(例:1分間)
- 古いデータから削除
- 効率的な保存方法を選択
まとめ:特性を強みに変える
発達障害の特性は、適切なテクニックと工夫で、プログラミングにおける強力な武器になります。
ADHD の強み:
- 視覚的思考 → カラフルで分かりやすいコード
- 短期集中 → 小さな単位で確実に進める
- 創造性 → 独創的な解決策を生み出す
ASD の強み:
- 規則性 → 統一された美しいコード
- 詳細志向 → 充実したドキュメント
- パターン認識 → 効率的な設計
大切なのは、「普通」のやり方に合わせるのではなく、自分の特性に合ったやり方を見つけること。このテクニック集が、あなたのプログラミングライフをより楽しく、生産的にする助けになれば幸いです。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。