
転職活動は誰にとってもストレスフルなものですが、発達障害のある方にとっては精神的な負担が特に大きくなりがちです。不採用通知、面接での緊張、将来への不安——これらと上手に付き合いながら、前向きに活動を続けるにはどうすればよいでしょうか。
筆者自身、ADHD当事者として5回の転職を経験しています。1社目(オフィスワーカー職)では入社1ヶ月で適応障害により休職し、それがきっかけでADHDと診断されました。3社目では8ヶ月、4社目では3ヶ月で退職するなど、メンタル面で何度も追い込まれた経験があります。現在はフルリモートのIT企業(年収800万円)でADHDをオープンにして働いていますが、ここに辿り着くまでに何度も「もうダメだ」と感じる夜がありました。
この記事では、当事者として実際にメンタルを崩した経験から学んだ転職活動のメンタルケアを、公的相談窓口の連絡先や厚生労働省の一次情報も交えて具体的にお伝えします。転職活動の基本的な進め方は発達障害の転職で失敗しない7つのポイントも参考にしてください。
RSDはADHD専門医のWilliam Dodson博士が提唱した概念で、ADHDの方の最大99%が経験すると報告されている特性です(出典: ADDitude Magazine: How ADHD Ignites Rejection Sensitive Dysphoria)。不採用通知を必要以上に深刻に受け止め、自己否定の感情に飲み込まれてしまうのが特徴です。
よくある思考パターン:
筆者も2社目に応募していた時期、20社連続で書類落ちが続き、夜中に履歴書を破り捨てたことがあります。後から振り返れば「企業側との条件のミスマッチ」だっただけなのですが、その瞬間は「自分という人間そのものが社会から拒絶された」と感じてしまうのです。これがRSDの怖さです。
転職活動は終わりが見えないマラソンのようなもの。ASDの方は特に、予測できない状況に強い不安を感じやすい傾向があります。「次の選考結果がいつ来るかわからない」状態が長く続くと、待っているだけで心身が摩耗していきます。
これらが積み重なり、定型発達の方の数倍は疲労してしまいます。筆者は面接3社を1日に詰め込んだ日、帰宅後に丸2日寝込んだ経験があります。
前職での失敗体験や、いじめ・パワハラの記憶がフラッシュバックすることもあります。筆者の場合、3社目で受けた昭和カルチャーの叱責が頭に蘇り、面接の場で言葉が出なくなったことがありました。
厚生労働省「こころの耳」のセルフチェックリストと当事者の経験を組み合わせ、段階別に整理しました。
重要: 重度症状が出た場合は、転職活動を一時中断し、必ず専門家に相談してください。後述の公的相談窓口に電話するだけでも構いません。「迷惑ではないか」と思う必要はなく、それらはあなたのために存在する窓口です。
活動期(2週間)
└→ 積極的に応募・面接
休息期(1週間)
└→ 応募を控え、自己ケア
振り返り期(3日間)
└→ 活動を振り返り、次の計画
ポイント: 常に全力ではなく、メリハリをつける。筆者は4社目→現職への転職時、この方式で2ヶ月活動した結果、燃え尽きずに内定を得られました。
歪んだ認知: 「不採用 = 自分の全否定」
修正した認知: 「不採用 = たまたま企業のニーズと条件が合わなかっただけ」
これは認知行動療法(CBT)の基本テクニックで、厚労省「こころの耳」でも認知の歪みへの対処法として紹介されています。
状況 | ネガティブな解釈 | ポジティブな解釈 |
|---|---|---|
書類選考落ち | 自分はダメだ | 別の良い会社と出会うチャンス |
面接で緊張 | 失敗した | 緊張するほど真剣だった証拠 |
長期化 | もう無理だ | 慎重に選んでいる証拠 |
不安発作時に有効なグラウンディング技法です。米国不安・うつ協会(ADAA)でも推奨されています。今この瞬間に意識を戻すために、五感で次の数を数えます。
筆者は面接前のトイレで毎回これをやっていました。ぐるぐるする思考を物理的な感覚に切り替えるだけで、心拍が落ち着きます。
面接での障害の伝え方については発達障害を面接で伝える完全ガイドも参考にしてください。
筆者は手帳取得後、地域障害者職業センターのジョブコーチに2週間に1度の頻度で相談していました。「不採用が続いて落ち込んでいる」とただ話すだけでも、視野が広がります。
【日付】○月○日
【活動内容】
- A社に応募
- B社の面接
【気分】(10点満点)
- 朝:6点
- 夜:4点
【良かったこと】
- 面接で笑顔を作れた
【改善点】
- 緊張で早口になった
【明日の目標】
- ゆっくり話す練習
効果: 客観的に振り返ることで、成長を実感できる。ADHDの「忘れっぽさ」とも相性が良く、過去の自分を励ましてくれる資料になります。
Before: 「面接で失敗した=自分はダメ」 After: 「面接で失敗した=次はもっと上手くできるデータが得られた」
失敗の分析シート
何が起きたか | なぜ起きたか | 次回の対策 |
|---|---|---|
質問の意図を誤解 | 緊張で聞き取れず | 聞き返すことを恐れない |
自己PRが長すぎた | 事前準備不足 | 1分バージョンを用意 |
面接後は必ず「できたこと」を3つ書き出す:
「3ヶ月以内に決める」などの期限は、プレッシャーになるだけ。「良い出会いがあるまで続ける」という考え方に切り替えましょう。筆者は4社目→現職への活動で4ヶ月かかりましたが、焦って決めなかったからこそ年収300万円アップが実現しました。
週単位の目標例:
達成したら自分にご褒美を。脳の報酬系が弱いADHDの方こそ、人為的にドーパミンを供給する仕組みが効きます。
ここに記載した窓口はすべて公的機関、または公的補助で運営されている無料相談窓口です。電話・SNSで気軽に話せるため、まずは小さく相談してみてください。
理想的な1日:
国立精神・神経医療研究センターによれば、規則正しい睡眠はうつ病の予防・回復に重要とされています。完璧を目指さず、まず起床時間だけでも固定するところから始めましょう。
運動はうつ症状の軽減に薬物療法と同等の効果があると複数のメタ分析で報告されています。
ADHDの方におすすめ:
ASDの方におすすめ:
積極的に摂りたい栄養素:
3社目を辞めた後、筆者は2ヶ月間まったく転職活動をしませんでした。罪悪感はありましたが、心療内科の主治医に「今は回復が最優先」と言われ、その言葉を信じて休んだのです。
結果として、休んだ後の方が応募書類の質も面接の受け答えも明らかに良くなりました。週3日は活動、2日は完全オフと決めることで、その後の活動でも燃え尽きずに4ヶ月で内定を得られました。休むことは敗北ではなく、長期戦を戦うための最重要戦術です。
筆者は4社連続でクローズ就労(障害を伝えない雇用)を続けていました。「障害を伝えたら採用されない」という思い込みで、誰にも相談できず追い詰められていったのです。
転機は精神障害者保健福祉手帳を取得し、ハローワークの障害者専門窓口で相談員と話したことでした。「あなたが向いている職場の条件はこういうものですね」と整理してもらえただけで、視界が一気に開けたのです。当事者会のオンラインコミュニティでも、同じ悩みを抱える仲間と話せたことが大きな支えになりました。支援機関は使うためにあります。
RSDの渦中にいるとき、筆者を救ったのは「応募書類を1通送れたら花丸、面接に行けたら二重丸」というシンプルな自己評価ルールでした。結果ではなく行動を評価するのです。
ADHD脳は「不採用」という大きな結果より、「今日も1社応募できた」という小さな成功の方が処理しやすい傾向があります。手帳に毎日◎を書き連ねていくと、不思議と「自分はちゃんと前に進んでいる」と思えるようになりました。
転職活動は確かに大変です。でも、以下のことを忘れないでください。
必ず、あなたを必要としている職場があります。筆者自身、4社の失敗を経て5社目でようやく心から働きやすい環境に出会いました。焦らず、自分を大切にしながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
転職に成功した方々の事例は発達障害者の転職成功事例10選、入社後の定着については発達障害者の転職後3ヶ月を乗り切る方法も参考にしてください。
一人で転職活動を続けるのが辛いなら、障害者専門の転職エージェントに相談してみましょう。書類添削から面接対策、メンタル面のサポートまで受けられます。筆者も現職への転職時、エージェントのカウンセラーに「無理せず行きましょう」と言ってもらえたことが大きな支えになりました。
どのエージェントも相談は無料です。一人で抱え込まず、プロの力を借りることも選択肢の一つです。
※症状が重い場合は、必ず専門家にご相談ください。記事冒頭の「公的相談窓口」も活用していただければと思います。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
運営者情報の詳細を見るASD(自閉スペクトラム症・旧称アスペルガー症候群を含む)にとって在宅勤務は、感覚過敏や対人疲労を「環境設計できる強み」に変える働き方です。ADHD当事者の運営者がASDの同僚を観察してきた知見と、研究機関・厚労省の一次情報をもとに、特性別の活かし方・落とし穴・職種選び・求人ルートまで実践的にまとめました。
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