発達障害者のための履歴書・職務経歴書の書き方|書類選考を突破する秘訣

「職歴が短い」「ブランクがある」「転職回数が多い」
発達障害のある方の多くが、履歴書や職務経歴書を書く際にこうした悩みを抱えています。しかし、書き方次第で、これらの経験もあなたの強みとして伝えることができます。
この記事では、採用担当者の視点と、実際に書類選考を突破した方々の事例を基に、効果的な書類作成方法をお伝えします。
履歴書作成の基本とポイント
写真の重要性
第一印象の40%は写真で決まると言われています。
ポイント:
- プロの写真館で撮影(3,000-5,000円の投資価値あり)
- 清潔感のある服装(スーツが基本)
- 自然な笑顔
- 3ヶ月以内に撮影したもの
基本情報欄の書き方
住所
- 都道府県から正確に記載
- マンション名も省略しない
- 通勤時間も考慮した居住地アピール
連絡先
- 日中連絡が取れる番号
- メールアドレスは分かりやすいもの
- 不適切:love_forever_123@…
- 適切:t.yamada.job@…
学歴・職歴欄の書き方
転職回数が多い場合
NG例:
2019.4 A社 入社
2019.8 A社 退社
2019.10 B社 入社
2020.2 B社 退社
OK例:
2019.4 A社 入社(営業職)
2019.8 A社 退社(契約期間満了)
2019.10 B社 入社(事務職)
2020.2 B社 退社(キャリアチェンジのため)
ポイント: 退職理由を簡潔に添える
ブランクがある場合
記載例:
2020.3 C社 退社
2020.4〜2021.3 療養及びスキルアップ期間
・体調管理方法の確立
・簿記2級取得
・PCスキル向上(MOS資格取得)
2021.4 D社 入社
志望動機欄の書き方
構成
- なぜその会社か(企業研究の成果)
- 何ができるか(自分の強み)
- どう貢献するか(具体的に)
例文(事務職志望):
貴社の「多様性を力に」という理念に共感し、志望いたしました。
私は細部への注意力と正確性が強みで、前職では伝票処理の
エラー率0.1%以下を維持しました。この特性を活かし、
貴社の事務部門の効率化に貢献したいと考えています。
本人希望欄の活用
配慮事項を記載する場合:
例:
勤務にあたり、以下の配慮をいただければ幸いです。
・静かな環境での作業(集中力向上のため)
・定期通院のための月1回の半休
上記以外は、貴社規定に従います。
職務経歴書作成の戦略
形式の選択
編年体式(時系列)
- 職歴が安定している方向け
- キャリアの成長が見える
キャリア式(職種別)
- 転職回数が多い方向け
- スキルを強調できる
職務要約の書き方
最初の3行で採用担当者の心を掴む:
例:
【職務要約】
営業事務として5年間、売上データ管理と顧客対応に従事。
特にデータ分析を得意とし、売上予測の精度向上に貢献。
発達障害の特性である集中力と正確性を強みに変え、
ミスの少ない業務遂行を実現してきました。
職務経歴の詳細
STAR法での記載
- Situation(状況)
- Task(課題)
- Action(行動)
- Result(結果)
例:
【職務内容】株式会社○○(2019.4〜2021.3)
■営業サポート業務
S: 営業資料作成に時間がかかり、営業活動に支障
T: 資料作成時間を50%短縮する必要があった
A: テンプレート化とマクロ活用を提案・実装
R: 作成時間を60%短縮、営業の商談数が1.5倍に
強みとなる発達障害の特性の表現方法
ADHDの場合
特性 → 強みとしての表現
- 過集中 → 「高い集中力で短期間での成果達成が可能」
- 発想力 → 「既存の枠にとらわれない革新的なアイデア」
- 行動力 → 「スピード感を持った実行力」
ASDの場合
特性 → 強みとしての表現
- こだわり → 「細部まで妥協しない品質管理能力」
- パターン認識 → 「データから規則性を見出す分析力」
- 記憶力 → 「詳細な情報を正確に記憶・活用」
LDの場合
特性 → 強みとしての表現
- 視覚的思考 → 「図解やビジュアル化による分かりやすい説明」
- 代替手段の活用 → 「ITツールを駆使した効率的な業務遂行」
- 創造性 → 「独自の視点からの問題解決」
活かせる経験・スキル
ハードスキル(技術的スキル)
■PCスキル
- Excel:VLOOKUP、ピボットテーブル、マクロ作成
- Word:報告書作成、差し込み印刷
- PowerPoint:プレゼン資料作成
- 専門ソフト:○○(使用歴○年)
■資格
- 簿記2級(2020年取得)
- MOS Excel Expert(2021年取得)
ソフトスキル(対人スキル)
■コミュニケーション
- 報連相の徹底による円滑な業務遂行
- メールでの丁寧な情報共有
- 図解を用いた分かりやすい説明
■自己管理
- ToDoリストによるタスク管理
- 優先順位付けによる効率的な業務遂行
- ストレス管理方法の確立
自己PR欄の活用
構成
- 強みの提示
- 具体的なエピソード
- 入社後の活かし方
例文:
【自己PR】
私の強みは「ミスのない正確な作業」です。
前職では経理補助として、月間1,000件以上の伝票処理を
担当していましたが、ダブルチェック体制と独自の
確認リストにより、3年間ミスゼロを達成しました。
これは、ASDの特性である「細部への注意力」と
「ルーティンワークへの適性」を活かした結果です。
貴社においても、この正確性を活かし、事務部門の
品質向上に貢献したいと考えています。
また、定期的な振り返りにより、常に業務改善を
心がけており、効率化の提案も積極的に行えます。
オープン就労の場合の記載方法
備考欄の活用
【備考】
発達障害(ADHD)の診断を受けており、障害者手帳を
所持しています。これまでの職場では、適切な配慮の
もと、問題なく業務を遂行してきました。
必要な配慮:
・指示の文書化(メールでの確認)
・静かな作業環境(可能な範囲で)
上記の配慮により、持てる能力を最大限発揮できます。
書類作成のチェックリスト
基本チェック
- 誤字脱字はないか
- 日付は最新か
- 写真は貼ってあるか
- 連絡先は正確か
内容チェック
- ポジティブな表現になっているか
- 具体的な数字や成果が入っているか
- 一貫性があるか
- 企業のニーズに合っているか
発達障害特有のチェック
- 特性を強みとして表現できているか
- 配慮事項は具体的か
- 前向きな印象を与えているか
応募書類の管理方法
デジタル管理
- 企業ごとにフォルダ分け
- バージョン管理(日付を付ける)
- バックアップを取る
応募管理表の作成
応募日 | 企業名 | 職種 | 書類 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
4/1 | A社 | 事務 | 履・職 | 通過 | 面接4/15 |
4/3 | B社 | 経理 | 履・職 | 待ち | - |
プロからのアドバイス
人事担当者の本音
「発達障害の記載があっても、具体的にどんな配慮が必要で、 どんな強みがあるかが明確なら、むしろ好印象です。 曖昧な記載や、ネガティブな表現ばかりだと不安になります。」 (IT企業 人事部長)
キャリアコンサルタントの助言
「書類は『会ってみたい』と思わせることが目的。 完璧である必要はなく、あなたらしさと可能性を 感じさせることが大切です。」 (キャリアコンサルタント)
まとめ
履歴書・職務経歴書は、あなたの「取扱説明書」です。 発達障害があることは、適切に伝えれば決してマイナスではありません。
重要なのは:
- 事実を前向きに伝える
- 具体的な成果や数字を入れる
- 特性を強みとして表現する
- 必要な配慮を明確にする
- 貢献できることを強調する
あなたの経験はすべて価値があります。 自信を持って、あなたらしい書類を作成してください。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。