発達障害者のための緊急時対応マニュアル|パニックや体調不良時の実践ガイド

「突然パニックになって、どうしていいか分からない...」
「体調が急に悪くなったけど、誰に何を伝えればいいの?」
「緊急時のために準備しておきたいけど、何から始めれば...」
緊急時の対応、本当に不安ですよね。
発達障害があると、予期せぬ状況への対応が苦手で、パニックやメルトダウン、急な体調不良時に適切な判断や行動ができなくなることがあります。
でも、事前の準備と具体的な対応手順があれば、緊急時でも落ち着いて行動できるようになります。
今回は、様々な緊急事態を経験した発達障害者50人以上の体験と、医療・福祉の専門家のアドバイスを基に、実践的な緊急時対応マニュアルを作成しました。
1. 発達障害者の緊急時の特徴と課題
緊急時に起こりやすいこと
ADHD の場合
パニック時には特徴的な症状が現れます。思考が真っ白になって何も考えられなくなったり、いつもなら冷静に判断できることでも衝動的な行動を取ってしまいます。優先順位がわからなくなり、何から手をつけていいかパニックになることも多いです。
また、過呼吸になりやすく、極端な判断をしてしまう傾向もあります。「頭では分かっているのに、体が動かない」という状況に陥りやすいのも特徴です。
ASD の場合
ASDの場合、パニック時には完全にフリーズしてしまうことが多くあります。言葉が出なくなったり、普段から敏感な感覚過敏がさらに悪化することもよくあります。
いつものルーティンが崩れることでパニックが起こりやすく、予期せぬ状況への柔軟な対応が特に困難になります。「いつもと違う状況で、完全に固まってしまう」という体験をする方が多いです。
なぜ緊急時対応が難しいのか
発達障害の特性により、緊急時の対応が特に困難になる理由があります。まず、実行機能の低下により計画を立てたり優先順位をつけることが難しくなります。さらに情報処理の遅延があるため、状況を素早く把握して判断することが困難です。
そして感情調整の困難さも加わることで、適切な判断や行動を取ることが非常に難しくなってしまいます。
「パニックになると、簡単なことも分からなくなる。だから事前準備が本当に大切」(30代・ADHD/ASD)
日常的なストレス管理については、発達障害者のためのストレス管理術も参考にしてください。
二次的な問題
緊急事態が起こると、負の連鎖に陥りやすいのも特徴です。まず緊急事態が発生すると、パニックになって適切に対応できません。すると周囲に迷惑をかけたと感じて自己嫌悪に陥ってしまいます。
この経験がトラウマ化してしまうと、次に同じような状況に直面した時の不安がさらに増大してしまい、より対応が困難になってしまいます。
2. パニック・メルトダウン時の対応
即座にできる対処法
パニック時の緊急対処は、段階を踏んで行うことが大切です。
第1段階:安全確保(30秒以内)
まず何よりも身の安全を確保します。危険な場所にいる場合は、すぐにその場を離れましょう。座れる場所を探し、人が少ない静かな場所に移動することが重要です。
第2段階:呼吸を整える(1~2分)
次に呼吸を整えます。4秒かけて息を吸い、4秒間息を止め、4秒かけて息を吐きます。これを3~5回繰り返すことで、心拍数を落ち着かせることができます。
第3段階:グラウンディング(2~3分)
現実感を取り戻すために、五感を使ったグラウンディングを行います。まず5つの見えるものを言葉に出し、4つの聞こえる音に耳を傾けます。次に3つのものに触れて感触を確かめ、2つの匂いを嗅ぎ、1つの味を感じます。
第4段階:連絡(5分以内)
落ち着いてきたら、信頼できる人に連絡を取ります。状況を簡潔に伝え、必要なサポートを求めることが大切です。
セルフトークカード
パニック時に自分自身に語りかける言葉を、事前に準備しておくことも効果的です。
「大丈夫、これは一時的なもの」
「深呼吸をしよう」
「安全な場所にいる」
「助けを求めてもいい」
「必ず落ち着く時が来る」
これらの言葉を、スマホの待ち受け画面に設定したり、カードに書いて持ち歩いたりしましょう。パニック状態では思考力が低下するため、事前に用意した安心できる言葉があることで、心を落ち着かせることができます。
場所別対処法
パニックが起こる場所によって、適切な対処法は異なります。
職場でパニックになった場合
まずトイレや休憩室など、一人になれる静かな場所に移動しましょう。上司には「体調が悪くなったので少し休憩します」と一言連絡します。緊急連絡先に電話をかけ、落ち着いてから詳しい状況を説明するようにします。
職場での対応については、発達障害者の会議サバイバル術も参考になります。
電車内でパニックになった場合
次の駅で降り、ホームのベンチに座って休憩します。必要に応じて駅員に助けを求めましょう。無理をせず、落ち着くまでしっかり待つことが大切です。
自宅でパニックになった場合
安全な部屋に移動し、照明を自分に合った明るさに調整します。冷たい水を飲んで体を落ち着かせ、信頼できる人に連絡を取りましょう。家という安全な場所にいることを自分に言い聞かせることも効果的です。
周囲への伝え方
パニック状態では上手く話せないことが多いため、簡潔で分かりやすい伝達フレーズを事前に準備し、練習しておくことが重要です。
「パニック発作が起きています」
「少し時間をください」
「静かな場所に行かせてください」
「(信頼できる人の名前)さんを呼んでください」
「救急車は不要です」
事前に周囲の人にこれらのフレーズについて説明しておくと、いざという時にスムーズに対応してもらえます。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
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