発達障害の失業保険ガイド|障害者は給付日数が最大360日
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「退職したいけど、辞めたあとのお金が不安で動けない」
発達障害のある方から、こういう声をよく聞きます。仕事がしんどくて限界が近いのに、貯金もそんなにない。辞めたら収入がゼロになる。その恐怖が、退職という決断にブレーキをかけてしまう。僕自身、ADHDと診断されて転職を5回繰り返してきた中で、「次が決まる前に辞める」ことの怖さは何度も味わいました。
でも、ここで知っておいてほしいことがあります。退職後の生活を支える「失業保険」(正式には雇用保険の基本手当)は、障害者手帳を持っている方など一定の条件に当てはまると、一般の人より給付日数がかなり長くなるという仕組みがあるんです。これを知らずに「自分なんて少ししかもらえない」と思い込んで、必要以上に不安になっている方が本当に多い。
この記事では、発達障害のある方が退職前後に知っておきたい失業保険の基本を、当事者目線でわかりやすく整理しました。読み終わるころには、「自分の場合はどれくらいの期間、いくらくらいもらえそうか」「次にハローワークで何を確認すればいいか」のイメージがつかめるはずです。
なお、お金と制度の話なので、正確さを何より大事にしています。要件は人によって、また年度によって変わるので、最終的には必ずお住まいの地域のハローワークでご自身のケースを確認してください。この記事はそのための「予習」として使ってもらえると安心です。
失業保険(雇用保険の基本手当)とは?まず全体像をつかもう
「失業保険」と呼ばれているものは、正式には雇用保険の「基本手当」といいます。働いていたときに雇用保険に入っていた人が、退職して次の仕事を探している間、生活の心配をしすぎずに就職活動に専念できるよう支えてくれる制度です。
ざっくり言うと、こういう性質のお金です。
- 失業中の生活を支えるためのもの(生活費の補填)
- もらうには「働く意思と能力があって、求職活動をしている」ことが前提
- 退職前の給料をもとに金額が決まる(だいたい以前の給料の5〜8割が目安。給料が低かった人ほど割合は高め)
- もらえる日数(所定給付日数)には上限があり、年齢・雇用保険に入っていた期間・辞めた理由で変わる
ここで大事なのが、最後の「もらえる日数」です。実はこの日数のところで、発達障害などで障害者手帳を持っている方は、一般の人より大きく優遇される仕組みがあります。次の章で詳しく見ていきましょう。
ちなみに「働く意思と能力があること」が条件なので、病気や体調が理由でしばらく働けない状態だと、そのままでは失業保険は受けられません。この場合は別の制度を使うことになります。そちらは記事の後半で説明します。
発達障害・障害者で知っておきたい「就職困難者」という区分
ここがこの記事でいちばん伝えたいポイントです。
雇用保険では、障害などの事情で就職が難しい立場にある人を「就職困難者」という区分で扱います。発達障害のある方がここに該当する代表的なケースが、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳など)を持っている場合です。
就職困難者に該当すると何がうれしいかというと、基本手当の「所定給付日数」が一般の離職者よりもかなり長くなるんです。
一般の人と就職困難者で、もらえる日数がこれだけ違う
ハローワークが公開している所定給付日数を比べてみます。まず、自己都合などで辞めた一般の離職者の場合です。
区分 | 給付日数 |
|---|---|
一般の離職者(被保険者期間10年未満) | 90日 |
一般の離職者(被保険者期間10年以上20年未満) | 120日 |
一般の離職者(被保険者期間20年以上) | 150日 |
これに対して、就職困難者の所定給付日数は次のようになっています。
年齢 | 被保険者期間1年未満 | 被保険者期間1年以上 |
|---|---|---|
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 | 360日 |
数字を見比べてみてください。たとえば30代で雇用保険に1年以上入っていた人が自己都合で辞めた場合、一般枠だと90日(約3か月分)ですが、就職困難者に該当すれば300日(約10か月分)になります。45歳以上なら被保険者期間に関係なく360日です。
これはかなり大きな差です。3か月で次を見つけなきゃ、と焦るのと、10か月の猶予があるのとでは、就職活動の余裕がまったく違います。特性に合った職場をじっくり探したい発達障害のある方にとって、この日数の差は本当にありがたいものだと思います。
注意:手帳を「持っているだけ」ではなく、ハローワークに伝える必要がある
ここで気をつけたいのが、就職困難者として扱ってもらうには、ハローワークの窓口で障害者手帳を提示し、就職困難者に該当することを申し出る必要があるという点です。黙っていると一般の離職者として手続きが進んでしまうことがあります。
「障害があることを窓口で伝えるのに抵抗がある」という気持ちは、当事者としてすごくわかります。でも、ここで伝えるか伝えないかで給付日数が倍以上変わることもある。お金の不安を減らすという意味では、伝えるメリットは大きいです。誰にどう知られるかが心配なら、最初に「この情報はどこまで使われますか」と窓口で確認してみるのも手です。
手帳を持っていない、取得を迷っているという方は、メリットとデメリットを整理したこちらの記事もあわせて読んでみてください。
あわせて読みたい:障害者手帳のメリットとデメリット|発達障害で取得を迷っている方へ
手帳がなくても優遇される?「特定理由離職者」という選択肢
「障害者手帳は持っていないけど、心身の不調が原因で辞めた」という方も多いと思います。そういう場合に関係してくるのが「特定理由離職者」という区分です。
特定理由離職者とは、自己都合での退職ではあるものの、それなりに正当な理由があると認められる離職者のことです。ハローワークの説明によると、その範囲には「体力の不足、心身の障害、疾病、負傷等により離職した者」が含まれています。発達障害そのものというより、それに伴う体調不良や二次障害(うつや不安障害など)で働き続けるのが難しくなって辞めた、というケースが当てはまる可能性があります。
特定理由離職者に該当すると、こんなメリットがあります。
- 自己都合退職でつく「給付制限」が緩和される場合がある(通常の自己都合だと、待期7日のあとさらに2か月ほど手当が出ない期間があるが、それが免除されることがある)
- 雇用保険の加入期間が短くても受給資格を得やすくなる(条件は後述)
つまり、手帳がなくても、辞めた理由が心身の不調によるものであれば、もらい始めるタイミングが早まる可能性があるということです。
ただし、これはあくまで「該当すれば」の話です。特定理由離職者として認めてもらうには、医師の診断書など、心身の状況を客観的に示せる書類が必要になることが多いです。自己申告だけで通るものではありません。「自分は当てはまりそうか」は、離職票を持ってハローワークで相談するのが確実です。
ちなみに、特定理由離職者はあくまで給付制限などの面で優遇される区分で、就職困難者(障害者手帳)のように給付日数そのものが大きく伸びるわけではない点は押さえておきましょう。手帳がある人は就職困難者の扱いのほうが日数の面では手厚い、と覚えておくとわかりやすいです。
ここまで読んで、「自分はもらえる側なのか?」が気になってきた方もいると思います。次は、そもそもの受給条件を確認しましょう。
失業保険をもらうための条件|雇用保険の加入期間がカギ
給付日数の話の前に、そもそも失業保険を受け取る資格があるかどうか。これは主に「雇用保険にどれくらい入っていたか(被保険者期間)」で決まります。
ハローワークの基準では、原則として次のようになっています。
離職のタイプ | 必要な被保険者期間 |
|---|---|
一般の離職(自己都合・定年など) | 離職前の2年間に、通算12か月以上 |
特定理由離職者・特定受給資格者(倒産・解雇・心身の理由など) | 離職前の1年間に、通算6か月以上 |
ポイントは2つあります。
ひとつは、心身の理由で辞めた特定理由離職者などは、必要な加入期間が短くて済むこと。一般枠だと「2年で12か月」必要なところ、「1年で6か月」でよくなります。働き始めて間もなく体調を崩して辞めた、という場合でも資格を得られる可能性が出てきます。
もうひとつは、「被保険者期間1か月」のカウントの仕方です。賃金の支払い対象になった日数が11日以上ある月(または労働時間が80時間以上の月)を1か月と数えます。出勤日数が少ない月は1か月に数えられないこともあるので、ここは自己判断せず窓口で確認するのが安全です。
自分の加入期間が足りているか不安な場合は、退職時に会社からもらう「離職票」と、手元にあれば「雇用保険被保険者証」を持ってハローワークで確認できます。
ハローワークでの手続きの流れ|申請から受給までのステップ
「実際どういう順番で進むの?」というのが、いちばんイメージしづらいところだと思います。発達障害のある方は、複雑な手続きや見通しの立たないスケジュールが苦手なことも多いので、流れを先に頭に入れておくと安心です。大まかには次のステップで進みます。
ステップ | 内容 |
|---|---|
(1) 必要書類を準備 | 離職票、本人確認書類、写真、本人名義の通帳、マイナンバー確認書類など。障害者手帳がある人は手帳も忘れずに |
(2) ハローワークで求職申込+受給資格決定 | 求職の申し込みをして書類を提出。この日が「受給資格決定日」になる |
(3) 待期期間(7日間) | 受給資格決定日から7日間は、理由を問わず全員もらえない期間 |
(4) 雇用保険説明会に参加 | 制度の説明を受け、受給に必要な書類を受け取る |
(5) 失業認定(原則4週間に1回) | 求職活動の実績などを申告し、「失業状態」であることを確認してもらう |
(6) 基本手当の振込 | 認定された分が、指定の口座に振り込まれる |
自己都合で辞めた場合は、待期7日のあとにさらに「給付制限」として2か月ほど手当が出ない期間があります(過去5年に2回以上自己都合離職している場合は3か月)。一方で、前に書いた特定理由離職者などに該当すると、この給付制限が免除されることがあります。
手続きでつまずかないための当事者向けのコツ
実体験として、こういう「持ち物が多くて、日程も複数回ある」手続きは、ADHDの自分にとって鬼門でした。なので、こんな工夫をおすすめします。
- 持ち物リストはハローワークの公式サイトで事前に確認し、メモアプリにコピーしておく
- 説明会・認定日はカレンダーに登録し、前日にリマインダーをセットする
- 認定日に行き忘れると、その回の手当がもらえないことがあるので最優先で死守する
- わからないことは、その場で窓口の人に遠慮なく聞く(みんな初めてです)
認定日の管理さえ落とさなければ、あとは流れに乗っていけば大丈夫です。
なお、就職活動の実績(応募や相談など)が認定の条件になります。求職活動の進め方そのものに不安がある方は、専門の支援を使う選択肢もあります。これは次の章で。
受給中の就活|就労移行支援・職業訓練は使っていいの?
「失業保険をもらいながら、就労移行支援や職業訓練に通ってもいいの?」という質問はとても多いです。結論から言うと、組み合わせ方によっては併用できますが、ルールが少し複雑なので必ずハローワークで確認してください。
ざっくりした考え方を整理します。
- 職業訓練(ハロートレーニング):失業保険を受けながら、無料(テキスト代などは自己負担)でスキルを学べる公的な訓練。受給期間中に訓練を受けると、条件によっては手当が訓練終了まで延長されることもある。IT系やビジネス系などコースは幅広い。
- 就労移行支援:障害のある人が、働くための訓練や就職サポートを受けられる福祉サービス。利用には自治体の手続きが必要で、失業保険との関係はケースによって異なるため、利用前にハローワークと自治体の両方に相談するのが安心。
職業訓練は「自分で求職活動をする実績」としても認められることが多く、受給中の選択肢として知っておいて損はありません。発達障害の特性に合った働き方やスキルをじっくり身につけたいなら、就労移行支援のほうが手厚いサポートを受けられます。
就労移行支援って具体的に何をするところ?という方は、こちらで詳しく解説しています。
あわせて読みたい:就労移行支援とは|発達障害者が利用すべき理由と選び方ガイド
特に、AIやデータ分析、ITスキルに特化した就労移行支援もあります。手に職をつけて在宅で働きたい人には、こうした専門コースが向いていることもあります。
病気や体調で「今は働けない」ときはどうする?
ここはとても大事なので、しっかり書きます。
失業保険は「働く意思と能力がある人」が対象です。だから、退職後に体調が悪くて、今すぐには働けない状態だと、そのままでは失業保険を受けられません。発達障害の二次障害でうつ状態になってしまった、心身ともに消耗していてまず休養が必要、というケースですね。
でも、ここで「じゃあ何ももらえないのか」とあきらめる必要はありません。状況に応じて、次のような制度があります。
(1) 失業保険の「受給期間の延長」
失業保険には「離職から原則1年以内に受給を終える」というルールがあるのですが、病気やケガで30日以上働けない場合、その分だけ受給できる期間を延ばせる「受給期間の延長」という手続きがあります。延長できる期間を含めると、最長で4年程度まで受給のチャンスを先送りできます。
つまり「今は休んで、回復して働けるようになってから失業保険を受け取る」ことができるわけです。延長の申請には期限があり、医師の証明などの書類も必要なので、退職後に「しばらく働けそうにない」と思ったら、早めにハローワークへ相談してください。
(2) 在職中の病気なら「傷病手当金」
もし退職の前から病気やケガで働けず、会社を休んでいた場合は、健康保険の「傷病手当金」という別制度の対象になることがあります。これは在職中に働けなくなったときに、給料のおおよそ3分の2が支給される仕組みで、失業保険とはまったく別物です。条件を満たせば、退職後も継続してもらえる場合があります。
傷病手当金(健康保険)と失業保険(雇用保険)は、
- 傷病手当金=「病気で働けない」ときの保障
- 失業保険=「働けるけど仕事がない」ときの保障
という、前提が真逆の制度です。だから同じ時期に両方を同時に受け取ることはできません。「まず傷病手当金で療養 → 回復したら失業保険に切り替える」という順番で使う人が多いです。この切り替えのために、上で書いた受給期間の延長が役立ちます。
傷病手当金や、長期的な収入を支える障害年金については、こちらでも触れています。
あわせて読みたい:傷病手当金の受け取り方ガイド
あわせて読みたい:発達障害と障害年金|受給の条件と申請の流れ
退職後の過ごし方や、休んでから復職・再就職に向かうステップについては、こちらの記事も参考になると思います。
あわせて読みたい:発達障害で休職したときの過ごし方と復職ガイド|焦らず自分のペースで職場復帰する方法
よくある質問(FAQ)
Q. 自己都合で辞めても失業保険はもらえますか?
もらえます。ただし一般の自己都合退職だと、待期7日のあとに2か月ほどの給付制限期間があり、その間は手当が出ません。心身の理由による離職で特定理由離職者に該当すれば、この制限が免除されることがあります。
Q. 障害者手帳を持っていると本当に給付日数が長くなりますか?
はい。障害者手帳を持っていて就職困難者に該当すると認められれば、所定給付日数が一般より長くなります。45歳未満で被保険者期間1年以上なら300日、45歳以上65歳未満なら360日が目安です。ただし、窓口で手帳を提示して就職困難者に該当する旨を伝える必要があります。
Q. 退職してから手帳を申請しても間に合いますか?
タイミングによって扱いが変わるため、ここは一概に言えません。手帳の取得を考えているなら、退職前後でハローワークに「手帳があると給付日数はどう変わるか」「いつまでに取得すれば反映されるか」を直接確認するのが確実です。
Q. うつ状態で今は働けません。それでも申請したほうがいいですか?
失業保険は「働ける状態」が前提なので、今すぐの受給は難しいです。ただし「受給期間の延長」を申請しておけば、回復後に受け取れる可能性を残せます。申請には期限があるので、早めにハローワークへ相談してください。
Q. 失業保険をもらいながらアルバイトはできますか?
一定の範囲内なら可能ですが、働いた日数や収入によって手当が減ったり、その日の分が後ろにずれたりします。申告を忘れると不正受給になってしまうので、必ず認定のときに正直に申告してください。
まとめ|お金の見通しが立つと、次の一歩が踏み出せる
最後に大事なポイントを整理します。
- 失業保険(雇用保険の基本手当)は、退職後の就職活動を支えるお金
- 障害者手帳を持ち就職困難者に該当すると、給付日数が一般より大幅に長くなる(最大360日)。ただし窓口での申し出が必要
- 手帳がなくても、心身の理由で辞めた場合は特定理由離職者として給付制限が緩和されることがある
- 受給には雇用保険の加入期間が必要(一般は2年で12か月、特定理由離職者などは1年で6か月)
- 今すぐ働けないときは、受給期間の延長や傷病手当金という別ルートがある
- 要件は人によって変わるので、最終確認は必ずハローワークで
退職後のお金の不安は、見通しが立たないことから生まれます。「自分はどれくらいの期間、いくらもらえそうか」がわかるだけで、心がずいぶん軽くなるはずです。まずは離職票と(あれば)障害者手帳を持って、ハローワークで自分のケースを確認するところから始めてみてください。一次情報はこちらで確認できます。
受給のその先へ|自分に合った職場を見つけるために
失業保険は、あくまで次の仕事を見つけるまでの「つなぎ」です。せっかく給付日数の余裕があるなら、その期間を使って、二度と消耗しない自分に合った職場を探したいところ。
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この記事を書いた人
りく|ADHD当事者のフロントエンドエンジニア
転職5回、低学歴、地方在住。それでも今は一般枠のフルリモートで年収1200万円で働いています。仕事が続かず何度も辞めてきた経験から、退職後のお金の不安がどれだけ人の足を止めるかを身をもって知っています。同じように悩む発達障害の方が、制度を味方につけて次の一歩を踏み出せるよう、当事者目線の情報を発信しています。
※本記事は制度の概要を当事者向けにわかりやすく解説したものです。受給の可否・金額・日数は個別の状況や年度によって異なります。医療・診断に関する判断は医師、制度の最終的な適用判断はハローワークなど公的機関にご確認ください。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
りく
- ADHD当事者
- 転職5回経験
- 現役エンジニア
- フルリモート勤務
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収1200万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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