職場で実践できるADHDの段取り改善術|先延ばしを防ぎタスクを確実にこなす方法

「やらなきゃいけないのに手がつかない」「優先順位がわからなくなる」「締め切りギリギリになってしまう」
ADHDを持つ方なら、こうした段取りの悩みは日常的なものかもしれません。でも、適切なテクニックと工夫を身につければ、特性と上手く付き合いながら仕事をこなすことができます。
この記事では、ADHDの方が職場で実践できる具体的な段取り改善術をご紹介します。ADHDエンジニアの働き方についてはADHDプログラマーという生き方も参考にしてください。
ADHDと段取りの関係
なぜ段取りが苦手なのか
ADHDの方が段取りを苦手とする背景には、脳の特性が関係しています。
特性 | 段取りへの影響 |
|---|---|
ワーキングメモリの制限 | 複数のタスクを頭に保持しにくい |
時間感覚の違い | 締め切りまでの時間を正確に把握しにくい |
報酬系の特性 | 即時の報酬がないタスクに着手しにくい |
注意の切り替え | 一つのことに集中すると他を忘れる |
興味による優先度 | 重要度より興味で優先順位が決まりがち |
「だらしない」のではなく「脳の特性」
段取りの苦手さは、努力不足や性格の問題ではありません。脳の情報処理の仕方が違うだけです。
だからこそ、一般的な段取り術ではなく、ADHDの特性に合った方法が必要です。
段取り改善の基本原則
原則1:頭の外に出す
ADHDの方は、頭の中だけでタスクを管理しようとすると破綻します。
すべてを書き出す
- 思いついたタスクは即座にメモ
- デジタルツール(Notion、Todoist等)を活用
- 「後で書こう」は禁止(忘れます)
おすすめツール
ツール | 特徴 | おすすめポイント |
|---|---|---|
Todoist | シンプルなタスク管理 | 入力が簡単、リマインダー充実 |
Notion | 柔軟なデータベース | カスタマイズ自由、視覚的 |
Google Keep | メモ特化 | 即座にメモ、色分け可能 |
Apple リマインダー | iPhone標準 | Siri連携、位置情報リマインダー |
原則2:見える化する
見えないものは存在しないのと同じです。
視覚化のテクニック
- カレンダーに締め切りを「見える形」で入れる
- 付箋を使って物理的にタスクを可視化
- 進捗をグラフやチャートで表示
デスク周りの工夫
- 今日やることを付箋でモニターに貼る
- 完了したら付箋を剥がす(達成感)
- 重要書類は目に見える場所に置く
原則3:細分化する
大きなタスクは、それだけで脳が拒否反応を起こします。
タスクの分解例
元のタスク | 分解後 |
|---|---|
レポートを作成する | 1. 目次を作る(10分)<br>2. データを集める(30分)<br>3. 本文を書く(60分)<br>4. 見直す(15分) |
新機能を実装する | 1. 仕様を確認する<br>2. 設計を書く<br>3. テストを書く<br>4. コードを書く<br>5. レビューを依頼する |
分解のコツ
- 1タスク = 30分以内で完了できる粒度
- 「〇〇する」という動詞で書く
- 曖昧な表現は避ける
原則4:仕組み化する
意志の力に頼らず、自動的に段取りが進む仕組みを作ります。
仕組み化の例
- 毎朝9時にタスク確認のアラーム
- 金曜日の夕方に週次レビューの予定をブロック
- プロジェクト開始時のチェックリストを用意
実践テクニック:先延ばし対策
テクニック1:2分ルール
2分以内で終わるタスクは、今すぐやる
理由
- 記録する時間の方がかかる
- 小さなタスクが積み重なると圧倒される
- すぐ終わると達成感が得られる
例
- メールの返信(簡単なもの)
- Slackでの一言返答
- 書類への署名
- ファイルの移動・整理
テクニック2:5分だけルール
やる気が出ないタスクには「5分だけやる」と自分に言い聞かせます。
「レポートを書く」ではなく「5分だけレポートに手をつける」
なぜ効果があるか
- 始めるハードルが下がる
- 実際に始めると続けられることが多い(作業興奮)
- 5分で終わっても進捗になる
テクニック3:ボディダブリング
誰かと一緒に作業することで、集中力を維持します。
方法
- 同僚と「もくもく作業時間」を設ける
- オンラインで画面共有しながら作業
- カフェなど人がいる場所で作業
- YouTubeの「Study with me」動画を流す
テクニック4:締め切りの前倒し
ADHDの方は締め切り直前にならないとエンジンがかからないことが多いです。
対策:自分だけの締め切りを設定
実際の締め切り | 自分の締め切り | バッファ |
|---|---|---|
金曜日 | 水曜日 | 2日 |
月末 | 25日 | 5日 |
来週月曜 | 今週金曜 | 3日 |
ポイント
- カレンダーには「自分の締め切り」を入れる
- 実際の締め切りは別で管理
- バッファがあることで想定外に対応できる
テクニック5:報酬を設定する
ADHDの脳は、即時の報酬に反応しやすい特性があります。
報酬の例
- タスク完了後のコーヒーブレイク
- 午前中のタスクを終えたらお気に入りのランチ
- 週のタスクを達成したら週末のご褒美
ポイント
- 小さな報酬を頻繁に
- 自分が本当に嬉しいものを選ぶ
- 「終わったら」という条件を守る
実践テクニック:優先順位付け
テクニック1:アイゼンハワーマトリクス
タスクを4つの象限に分類します。
緊急 | 緊急でない | |
|---|---|---|
重要 | 今すぐやる | スケジュールに入れる |
重要でない | 人に任せる/短時間で済ませる | やらない/後回し |
ADHDの方向けの使い方
- 毎朝、タスクを4象限に振り分ける
- 「緊急かつ重要」は3つまでに絞る
- 「緊急でないが重要」を忘れないよう定期リマインダー
テクニック2:MIT(Most Important Tasks)
今日やるべき最も重要なタスクを3つだけ決める
ルール
- 3つ以上は選ばない
- 朝一番に決める
- MITが終わるまで他のことをしない
例
今日のMIT
- プルリクエストのレビュー(チームブロック中)
- 新機能の設計書作成
- クライアントへの進捗報告メール
テクニック3:エネルギーマッピング
自分のエネルギーレベルに合わせてタスクを配置します。
時間帯 | エネルギー | 適したタスク |
|---|---|---|
9:00-11:00 | 高 | 集中力が必要な作業(コーディング、設計) |
11:00-12:00 | 中 | メール対応、ミーティング |
13:00-14:00 | 低(昼食後) | 単純作業、整理整頓 |
14:00-16:00 | 中〜高 | 集中作業(第2波) |
16:00-17:00 | 中 | レビュー、翌日の準備 |
自分のエネルギーパターンを把握する
- 1週間、1時間ごとの集中度を記録
- パターンを分析
- タスクを最適な時間帯に配置
実践テクニック:タスク管理
テクニック1:デイリープランニング
毎朝10分、その日の段取りを立てます。
手順
- 今日やるべきタスクをリストアップ(5分)
- 優先順位を付ける(2分)
- カレンダーにブロックする(3分)
テンプレート例
今日の予定
- MIT1:〇〇(9:00-10:30)
- MIT2:〇〇(10:30-12:00)
- MIT3:〇〇(14:00-15:00)
- その他:メール確認、Slack対応
テクニック2:タイムボクシング
タスクに時間の「箱」を設定し、その時間内で終わらせます。
やり方
- タスクに必要な時間を見積もる
- カレンダーにその時間をブロック
- 時間が来たら強制終了
ADHDの方向けのコツ
- 見積もりの1.5倍の時間を確保(バッファ)
- タイマーを使って「あと〇分」を意識
- 完璧を目指さず「時間内の最善」を目指す
テクニック3:ウィークリーレビュー
週に1回、段取りの振り返りを行います。
チェック項目
- 今週完了したタスク
- 未完了のタスク(理由を分析)
- 来週の重要タスク
- うまくいった段取り術
- 改善したいポイント
おすすめタイミング
- 金曜日の終業前
- または日曜日の夜
環境整備のコツ
物理的な環境
デスク周り
- 必要なものだけをデスクに置く
- 「一時置き場」を作って散らかり防止
- 視界に入る情報を最小限に
整理整頓のルール
- 使ったものは元の場所に戻す
- 「とりあえず置く」場所を決める
- 週1回、15分の整理タイム
デジタル環境
通知の管理
- 作業中は通知をオフ
- 「通知を見る時間」を決める
- 重要な連絡だけ通知を許可
ファイル管理
- フォルダ構成をシンプルに
- 命名規則を決める(日付_プロジェクト名_内容)
- 定期的に整理する日を設定
職場での工夫
上司・同僚への伝え方
段取りの工夫について、必要に応じて周囲に伝えることも大切です。
伝え方の例
「私は複数のタスクを同時に抱えると混乱しやすいので、優先順位を明確にしていただけると助かります」
「急な依頼があると対応が難しいことがあるので、可能であれば前日までにお知らせいただけると確実に対応できます」
会議での段取り
事前準備
- アジェンダを確認し、自分の発言を準備
- 必要な資料を前日までに用意
- 会議の目的とゴールを明確に
会議中
- メモを取る(後で見返せるように)
- 不明点はその場で確認
- 次のアクションを明確にして終わる
フルリモートでの働き方については発達障害エンジニアのリアルな1日も参考にしてください。
失敗したときの対処法
完璧を目指さない
段取りが上手くいかない日もあります。それは普通のことです。
心がけ
- 「今日は上手くいかなかった」で終わりにする
- 明日また新しく始める
- 小さな成功を積み重ねる
失敗からの学び
振り返りの質問
- なぜ段取りが崩れたのか?
- 次回、同じ状況でどうすれば良いか?
- 仕組みで防げることはないか?
セルフコンパッション
自分を責めすぎないことも大切です。
「段取りが苦手なのはADHDの特性であって、私のせいではない。でも、工夫で改善することはできる。」
まとめ:段取り改善の5つの原則
ADHDの方が段取りを改善するための基本原則をおさらいします。
- 頭の外に出す - すべてを書き出してツールで管理
- 見える化する - 視覚的にタスクと進捗を把握
- 細分化する - 大きなタスクを小さく分解
- 仕組み化する - 意志の力に頼らない自動化
- 自分を許す - 完璧を目指さず、改善を続ける
段取りの改善は一朝一夕にはいきません。でも、一つずつテクニックを試して、自分に合った方法を見つけていけば、必ず改善できます。
特性を理解した転職活動については発達障害の転職で失敗しない7つのポイントもぜひ参考にしてください。
環境を変えて段取りを改善したい方へ
今の職場環境では段取りが難しいと感じたら、より働きやすい環境への転職も選択肢です。
ITエンジニア専門
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障害者雇用での転職
この記事を書いた人
ADHDと診断されたフロントエンドエンジニア。段取りの苦手さに悩み続けた経験から、特性に合った仕事術を研究。現在はフルリモートで働きながら、タスク管理ツールとルーティンを駆使して安定した生産性を実現。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。

