
「障害者手帳を取った方がいいのかな...」「手帳を持つことにデメリットはないの?」
発達障害(ADHD・ASD)の診断を受けた後、多くの方が悩むのが障害者手帳の取得です。「取得したら周りにバレるのでは」「一度取ったら取り消せないのでは」といった不安を抱えている方も少なくありません。
結論から言うと、障害者手帳はメリットが多く、デメリットは思っているほど大きくないというのが多くの当事者の実感です。ただし、全員に必要というわけではありません。
僕自身、ADHDと診断されたエンジニアで、これまでの転職でクローズ(手帳を使わず一般雇用)とオープン(手帳を提示して障害者雇用もしくは一般雇用・配慮あり)の両方を経験しています。現職は手帳を提示してオープンで働いています。
この記事では、手帳取得を迷っている方に向けて、公的データと著者の実体験をベースにメリット・デメリットを正直に整理し、取得の判断に必要な情報をお伝えします。
フルリモートで働きたい方は発達障害者にとってフルリモートは天国だった件もあわせて参考にしてください。
発達障害の方が取得できるのは精神障害者保健福祉手帳です。等級は1級から3級まであり、発達障害の場合は2級または3級に該当するケースが多いです(出典: 厚生労働省 精神障害者保健福祉手帳)。
等級 | 対象となる状態 | 発達障害での該当 |
|---|---|---|
1級 | 日常生活に常時援助が必要 | まれ |
2級 | 日常生活に著しい制限がある | 二次障害がある場合など |
3級 | 日常生活・社会生活に制限がある | 多くの発達障害者が該当 |
重要なポイント
「一度取ったら一生持たなければいけない」というのは誤解です。不要になればいつでも返納できます。
診断を受けること自体を迷っている方は、発達障害の診断を受けるべきか|エンジニアとしてのメリット・デメリットもあわせて読んでみてください。
障害者手帳の最大のメリットは、障害者雇用枠での就職・転職が可能になることです。
障害者雇用枠のメリットは以下の通りです。
僕自身は4社目まで手帳を使わずクローズで転職していましたが、現職に転職する際に手帳を取得し、オープンで採用されました。「面接で特性を伝える」だけでなく「手帳という公的な証明を提示できる」ということで、企業との交渉がスムーズに進んだ印象です。
障害者雇用枠での転職を検討している方は、発達障害の特性を理解した専門のアドバイザーに相談するのが近道です。dodaチャレンジで障害者雇用の求人を探す
手帳を持っていると、障害者雇用に特化した転職エージェントを利用できます。
サービス | 特徴 | こんな方におすすめ |
|---|---|---|
dodaチャレンジ | 障害者雇用の求人数業界最大級 | 選択肢を広げたい方 |
atGP | 障害者転職支援実績No.1 | 手厚いサポートが欲しい方 |
一般の転職エージェントでは対応しきれない、特性に合った職場選びや配慮事項の伝え方まで、きめ細かくサポートしてもらえます。転職エージェントの詳しい比較は、発達障害者向け転職エージェント7社比較で解説しています。
障害者手帳を持っていると、所得税・住民税の障害者控除が適用されます(出典: 国税庁 障害者控除)。
控除の種類 | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) |
|---|---|---|
障害者控除(3級) | 27万円 | 26万円 |
特別障害者控除(1・2級) | 40万円 | 30万円 |
年収400万円の場合、障害者控除により年間約5~8万円の節税効果が見込めます。確定申告または年末調整で申請できます。
自治体やサービスによって異なりますが、以下のような割引を受けられる場合があります。
割引の内容は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当課で確認してみてください。
就労移行支援は医師の診断書でも利用できますが、手帳を持っていると手続きがスムーズになります。また、自治体によっては手帳所持を条件としている支援サービスもあります。
一部の自治体では、障害者手帳を持つ方に対して医療費の助成制度を設けています。通院にかかる費用が軽減される可能性があるため、確認する価値があります。
意外と大きいのが、心理的なメリットです。
僕自身、手帳を取得したときに「自分の困りごとは公的に認められた」という感覚がありました。診断だけでは「医者の認識」のレベルですが、手帳は「行政としての認識」になります。「自分はダメだ、甚えているだけ」と思い込みそうになるとき、手帳を見ると「あ、これは公的に認められている状態」と心を落ち着かせられるのです。
正直に言うと、大きなデメリットはほとんどありません。ただし、以下の点は知っておく必要があります。
デメリット | 詳細 | 対処法 |
|---|---|---|
取得に手間がかかる | 診断書の準備、1~2ヶ月の審査期間 | 主治医に相談し、必要書類を確認する |
2年ごとの更新が必要 | 期限切れに注意 | スマホのリマインダーで管理する |
年末調整でやや不便 | 控除を会社で受けると経理担当に伝わる | 確定申告で自分で手続きする |
診断書作成費用 | 5,000〜10,000円程度(医院による) | 主治医に事前に確認 |
誤解1:「会社にバレるのでは?」
手帳を持っていることを会社に伝える義務はありません。年末調整で障害者控除を申請すると会社の経理担当者が知る可能性はありますが、確定申告で自分で申請すれば会社に知られることはありません。
僕もクローズで働いていたときは確定申告で自分で障害者控除を申請していました。会社で手帳のことが話題に上がることは一度もありませんでした。
誤解2:「一度取ったら取り消せない」
前述の通り、いつでも返納できます。2年ごとの更新時に更新しなければ自動的に失効します。外見上も「手帳を持っていること」がわかるようなシールはありません。
誤解3:「障害者手帳を持つと保険に入れなくなる」
一般的な生命保険や医療保険では、手帳の有無ではなく健康状態や通院歴が告知事項です。手帳を取得したこと自体が保険加入を妨げるわけではありませんが、通院中の場合は告知義務があります。保険については個別のケースが多いため、保険会社に直接確認することをおすすめします。
誤解4:「戸籍や住民票に記載される」
障害者手帳の情報は戸籍にも住民票にも記載されません。プライバシーは守られています。子供の進学・就職、結婚にも影響しません。
職場への開示について詳しく知りたい方は、発達障害をカミングアウトした結果|職場での変化と対処法も参考になります。
取得を決めた場合の流れをまとめます。
ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
1 | 主治医に手帳取得の意向を伝える | - |
2 | 主治医に診断書を作成してもらう | 1〜2週間 |
3 | 市区町村の窓口で申請する | 即日 |
4 | 審査・交付 | 1〜2ヶ月 |
申請に必要なもの:
費用は診断書代のみ(5,000〜10,000円程度)で、手帳自体の交付は無料です。
以下に当てはまる方は、障害者手帳の取得を前向きに検討する価値があります。
一方、「現在の職場で問題なく働けている」「一般枠での転職を考えている」という方は、無理に取得する必要はありません。状況が変わったときに改めて検討すれば十分です。
合理的配慮の具体的な求め方については、職場での合理的配慮の求め方完全ガイドで詳しく解説しています。クローズでいくかオープンでいくか迷っている方は、発達障害のクローズ就労完全ガイドも参考にしてください。
参考までに、僕が現職に転職するタイミングで手帳を取得し、オープンに切り替えた理由を共有します。
逆にクローズを選んだタイミングもありました。「手帳はツール」として考え、その職場・そのタイミングで「使うか」「使わないか」を選ぶのがべストだと思います。
障害者手帳の取得は、発達障害を持つ方にとって選択肢を広げるためのツールです。
この記事のポイント:
迷っているなら、まずは主治医に相談してみることをおすすめします。手帳を持っていても使わなければ何も変わりませんが、持っていればいざというときの選択肢が広がります。
障害者雇用枠での転職を考え始めたら、発達障害の特性を理解した専門エージェントへの相談が第一歩です。atGPに無料で相談する
転職活動の全体的な進め方については、発達障害の転職で失敗しない7つのポイントもあわせて確認してみてください。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
運営者情報の詳細を見る
障害者雇用の給料が気になる方へ。厚生労働省の調査データをもとに平均月収・年収を障害種別・雇用形態別に詳しく解説。一般雇用との差額や、発達障害者(ADHD・ASD)が障害者雇用のまま収入を上げるための具体的な5つの方法も紹介します。

障害者雇用枠と一般雇用枠の違いを分かりやすく解説。発達障害(ADHD・ASD)の方が障害者雇用で働くメリット・デメリット、給与水準の実態、合理的配慮の内容、向いている人の特徴まで当事者目線で詳しく解説。転職を検討中の方必見です。

就労移行支援の基本的な仕組みから、発達障害(ADHD・ASD)の方が利用するメリット、おすすめ事業所の比較、自分に合った事業所の選び方まで詳しく解説。無料で利用できる制度を活用して、安心して就職を目指しましょう。