「今日も、誰とも一言も話さないまま一日が終わった」
在宅勤務をしていて、ふとそんなことに気づいて、胸の奥がすうっと冷たくなる瞬間。あなたにも、ありませんか。
僕はADHDと診断されたフロントエンドエンジニアで、地方でフルリモート勤務をしています。通勤がなくて、満員電車もなくて、苦手な雑談を強制されることもない。正直、在宅勤務に切り替わったときは「これで救われた」と本気で思いました。
でも、しばらくして気づいたんです。静かで快適なはずの在宅勤務が、じわじわと孤独でつらくなってきていることに。誰にも相談できず、「こんなに恵まれた環境で何を贅沢な」と自分を責めて、余計に落ち込む。あのときの感覚は、今でもよく覚えています。
先に言っておきたいのは、在宅勤務でさみしい・つらいと感じるのは、甘えでも弱さでもないということです。むしろ発達障害(ADHD/ASD)の特性とも深く関係していて、起きるべくして起きている反応だと、僕は実感しています。
この記事では、在宅勤務「ならでは」の孤独がなぜ起きるのかを整理したうえで、フルリモートで実際にやってみて効いたこと・効かなかったことを、できるだけ正直に書きます。読み終わるころには、「自分だけじゃなかった」「これなら今日から試せそう」と少し肩の力が抜けていたら嬉しいです。
「孤独」と検索すると、職場の人間関係の話がたくさん出てきます。でも、在宅勤務の孤独はそれとは少し質が違う、と僕は感じています。
職場にいれば、たとえ人間関係が苦手でも、廊下ですれ違う人がいて、誰かの咳払いが聞こえて、ランチに行く人の気配がある。会話がなくても「人がいる場所にいる」という感覚そのものが、実は心を支えていたりします。
在宅勤務では、それが丸ごと消えます。画面の向こうに同僚はいるはずなのに、物理的には完全に一人。この「つながっているはずなのに、誰もいない」という独特の引き裂かれ感が、在宅勤務の孤独の正体だと思っています。
そして発達障害のある人にとって、この環境は良くも悪くも作用します。刺激が減って楽になる一方で、放っておくと気づかないうちに沈んでいく。次の章で、その原因を在宅特有の観点から分けて見ていきます。
僕自身が経験して、「ああ、これが効いていたのか」と後から腑に落ちた原因を4つにまとめました。当てはまるものがあれば、それは性格のせいではなく、環境と特性のかけ合わせで起きていることです。
在宅勤務でいちばん最初に消えるのが、雑談です。
「昨日のあれ見た?」「この資料わかりにくいよね」みたいな、何の生産性もない会話。出社していたころは、正直うっとうしいとすら思っていました。でも、なくなって初めて気づいたんです。あの雑談が、感情のガス抜きとして機能していたことに。
うれしいことがあっても、しんどいことがあっても、画面の前で一人だと共有する相手がいません。チャットで仕事の連絡は飛び交うのに、「感情」だけがどこにも行き場をなくして、自分の中に溜まっていく。これが在宅の孤独の入口だと感じています。
通勤には、実はものすごく大事な役割がありました。「今から仕事」「もう仕事おわり」という気持ちの切り替えスイッチです。
在宅勤務だと、寝ていた布団のすぐ横で仕事が始まり、終わってもその場から動かない。ADHDの特性で過集中に入ると、気づけば外は真っ暗、ということも珍しくありません。逆に集中が切れると、仕事なのか休憩なのか自分でもわからない曖昧な時間がだらだら続く。
オンとオフの境界がなくなると、一日にメリハリがなくなって、「何もしていないのに疲れている」状態になります。この生活の輪郭がぼやける感覚が、じわじわと気力を削っていきます。
出社していれば、上司や同僚があなたの働きぶりを直接見ています。黙々と作業している姿も、困って唸っている様子も、誰かが目にしている。
在宅だと、それが一切伝わりません。自分の頑張りが誰にも見られていない、評価されているのかもわからないという不透明さが、不安を増幅させます。
特にASD傾向のある方だと、相手の反応が見えないこと自体が大きなストレスになりやすい。チャットの返信が素っ気ないだけで「怒っているのかも」と読み取ってしまったり、既読がつかないだけで一日中そわそわしたり。テキストだけのコミュニケーションは、表情や声色という情報が削ぎ落とされるぶん、不安を埋める材料が足りなくなるんです。
ここが、発達障害のある人にとって特にしんどいポイントだと思っています。
一人で家にこもっていると、頭の中で考えがぐるぐる回り続けます。「あのときの返信、変だったかな」「自分は仕事ができないんじゃないか」。こうした同じ思考を何度も反すう(くり返し考えること)してしまう傾向は、ADHD・ASDのある人に起きやすいと感じています。
出社していれば、誰かに話しかけられたり、次の会議が始まったりして、強制的に思考が断ち切られます。でも在宅では、その思考を止めてくれる外部の刺激がない。だから、ネガティブな考えがどこまでも深まっていきます。
しかも「在宅勤務という恵まれた環境で弱音を吐くなんて」という過剰な自己責任感が加わると、苦しさを誰にも打ち明けられなくなる。僕がまさにそうでした。一人で抱え込んで、勝手に追い詰められていく。これが在宅孤独のいちばん危険な部分だと思います。
ここまで読んで、思い当たる節はありませんか。もしいくつも当てはまったとしても、落ち込まなくて大丈夫です。原因がわかれば、打ち手は必ずあります。次の章から、実際にやってみたことを正直に書いていきます。
ここからは、僕がフルリモートで孤独と向き合うなかで試してきたことです。全部がうまくいったわけではありません。効かなかったものも含めて書くので、自分に合いそうなものから一つだけ試してみてください。全部やろうとしないことが、たぶんいちばん大事です。
放っておくと雑談はゼロのままなので、自分から仕掛けるしかありませんでした。
僕がやって効いたのは、こんなことです。
特に最後の「雑談タイム」は、勇気がいりましたが効果が大きかったです。用件のない会話を、わざわざ予定として確保する。最初はぎこちなくても、これがあるだけで一週間の心の支えになりました。
ちなみに、効かなかったのは「常時つなぎっぱなしの通話(バーチャルオフィス的なもの)」です。常に誰かに見られている感覚がしんどくて、僕にはむしろ逆効果でした。人によって合う合わないがあるので、無理に流行りの方法に合わせなくていいと思います。
職場の人には言いにくい悩みも、同じ発達障害の当事者になら話せる、ということがあります。
オンラインの当事者コミュニティや、発達障害をテーマにしたコミュニティに参加してみると、「在宅で孤独なの、自分だけじゃなかったんだ」と心底ほっとしました。アドバイスをもらうというより、「わかる」と言ってもらえるだけで救われる感覚です。
注意点として、コミュニティによっては愚痴や不安が増幅し合ってしまう場所もあります。自分がそこにいて少し元気になれるか、逆に疲れるかを基準に、合わなければ静かに離れていい。居場所は一つに絞らず、ゆるく複数あるくらいがちょうどいいと感じています。
メンタルの話なのに、いきなり身体の話で拍子抜けするかもしれません。でも僕の実感として、気分が落ちているときほど、頭ではなく身体から立て直すほうが早かったです。
具体的にやっていることはシンプルです。
やること | 中身 | 狙い |
|---|---|---|
起床時間を固定 | 仕事の有無に関わらず同じ時間に起きる | 生活の輪郭を取り戻す |
着替える | パジャマのまま仕事をしない | オンへの切り替え |
朝に外を15分歩く | 通勤の代わりに散歩 | 日光・リズム・気分転換 |
夕方に軽く運動 | スクワットや近所の散歩でOK | 反すうを物理的に止める |
特に運動は、ぐるぐる考えてしまう反すうを断ち切るのに効きました。身体を動かしている間は、不思議とネガティブな考えが止まります。激しい運動は続かなかったので、「外に出て歩くだけ」に振り切ったらようやく習慣になりました。完璧を目指さないのがコツです。
在宅勤務だと、自分が何をやったか・どう感じたかが流れて消えていきます。これが「何も成し遂げていない気がする」という空虚さにつながっていました。
そこで始めたのが、一日の終わりに3行だけ書くことです。
・今日やったこと(小さくてOK) ・今日しんどかったこと ・今日ちょっと良かったこと
たったこれだけですが、自分の頑張りと感情を「見える形」にしておくと、漠然とした孤独感が少し具体的になります。「評価されているか不安」という気持ちも、自分でちゃんと自分を見ていれば、いくらか和らぎました。手帳でもスマホのメモでも、続けやすいもので大丈夫です。
ADHDの時間管理や生活リズムの崩れにもっと踏み込みたい方は、ADHDの在宅勤務完全ガイド|過集中を武器にし時間管理の崩壊を防ぐも、あわせて読んでみてください。
「孤独です」とは上司に言いにくいですよね。僕も最初は無理でした。でも、伝え方を変えたら相談できるようになりました。
ポイントは、気持ちの話ではなく「働き方の調整」として相談することです。
(言いにくい例)「在宅でさみしくて、つらいんです」 (伝えやすい例)「在宅だと進捗が見えにくく不安なので、週1回10分だけ短い1on1の時間をもらえませんか」
後者なら、相手も具体的に動けます。実際に僕も「定期的な短い1on1」をお願いして、それだけでだいぶ楽になりました。
ASDの方で、相手の反応が見えない不安が強い場合は、「テキストだけだと意図を読み違えやすいので、複雑な話は通話でお願いしたい」と伝えるのも立派な配慮の申請です。こうした合理的配慮(障害特性に応じて働き方を調整してもらうこと)は、雇用の場面では障害者雇用促進法により企業に提供する義務があります(2024年4月からは改正障害者差別解消法で民間事業者全般にも義務化)。配慮の頼み方をもっと知りたい方は、ASD当事者向けのASDの在宅勤務完全ガイドも参考になります。
最後はとてもシンプルです。家から出る。
僕は週に1〜2回、カフェやコワーキングスペースで仕事をするようにしました。家以外の場所に身を置くだけで、「人がいる空間にいる」という感覚が戻ってきて、それだけで孤独感がやわらぎます。誰かと話さなくても、人の気配があるだけで違うんです。
毎日出る必要はありません。出社のないフルリモートだからこそ、意図的に外と接点を作らないと、本当に何日も家から出ない事態になる。これは在宅勤務者が陥りやすい落とし穴なので、週に一度でも外に出る予定を入れておくのをおすすめします。
在宅勤務そのものを快適にする工夫については、発達障害者にとってフルリモートは天国だった件で、在宅の良い面も含めて掘り下げています。気持ちが少し上向いたときに読んでもらえたらと思います。
ここまで対処法を書いてきましたが、いちばん大事なことを伝えさせてください。
気分の落ち込みが2週間以上続いている、眠れない・眠りすぎる、何をしても楽しめない、食欲がない。こうした状態が続くときは、対処法でなんとかしようとせず、専門家に相談してください。
発達障害のある人は、孤独やストレスが続くと、うつ病や不安障害といった二次障害(特性そのものではなく、つらい状況が積み重なって後から生じる心の不調)につながることがあります。これは気合いや工夫でどうにかするものではなく、医療の領域です。診断や治療ができるのは医師だけなので、自己判断で抱え込まないでください。
働く人のための公的な相談窓口もあります。
「まだそこまでじゃない」と思っても、早めに相談しておくほうが回復は早い、というのが二次障害を遠回りに経験した僕の実感です。二次障害の予防については発達障害の二次障害を防ぐ方法で詳しくまとめているので、不安な方は目を通してみてください。
頼ることは、弱さではありません。一人で抱えないでください。
ここまでの対処法を試しても、どうしても孤独やつらさが消えないことがあります。そのとき考えてほしいのは、「自分が悪い」のではなく「今の職場・働き方が、自分の特性に合っていないだけ」かもしれないという視点です。
たとえば、こんなケースです。
こうした環境のミスマッチは、個人の努力だけでは限界があります。発達障害の特性を理解し、在宅勤務やフォロー体制が整った職場に移ることで、孤独そのものが大きく減ることは珍しくありません。職場の人間関係に消耗している場合は、発達障害で職場の人間関係がつらいときの対処法も切り口の一つになります。
すぐに転職する必要はありません。ただ、「もし合わなければ動ける」という選択肢を持っておくだけで、今の孤独がだいぶ軽くなる。これも、実際にやってみて気づいたことです。
もし「配慮のある職場ってどんなものか、情報だけでも知りたい」と思ったら、発達障害に理解のある転職エージェントに、相談だけしてみるのも手です。すべて無料で、登録したからといって転職を急かされることもありません。話を聞いてもらうだけでも、視野が広がります。
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最後に、この記事の要点を振り返ります。
僕自身、在宅の孤独で本気でしんどかった時期がありました。あのとき「甘えだ」と自分を責めていたのが、今振り返るといちばんの間違いでした。孤独を感じるのは、あなたが人とのつながりをちゃんと求められる人だからです。それは弱さではありません。
今日、この中のどれか一つでいいので、試してみてください。外を15分歩くでも、チャットに「おはよう」と書くでも。小さな一歩で、明日が少し変わるかもしれません。
もし環境そのものを見直したくなったときのために、相談先も置いておきます。今すぐでなくて大丈夫です。
「今の働き方が、自分に合っていないのかもしれない」
そう感じたら、発達障害の特性を理解した転職エージェントに、相談だけしてみるのも一つの方法です。在宅勤務OKの求人や、フォロー体制の整った職場の情報を、無料で教えてもらえます。話を聞くだけでも、選択肢が見えてきます。
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この記事を書いた人 ADHDと診断されたフロントエンドエンジニアです。地方でフルリモート勤務をしながら、在宅勤務の孤独やしんどさと向き合ってきました。同じように一人で抱え込んでいる方に、「自分だけじゃない」と思ってもらえたら嬉しいです。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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