「この年で転職なんて、もう無理なんじゃないか」 「発達障害で、しかも50代。誰が雇ってくれるんだろう」 「でも、今の働き方をあと10年続けられる自信はない」
もしあなたが今、こんな思いを抱えているなら、それは決して甘えでも考えすぎでもありません。50代の転職は20代や30代と同じようにはいきませんし、そこに発達障害が重なれば、不安が大きくなるのは当然です。
ただ、ここでひとつだけ先に言わせてください。「50代だから詰み」ではありません。20代には20代の、50代には50代の戦い方があります。むしろ、これまで積み上げてきた経験や、自分の特性との付き合い方を知っていることは、若い世代にはない武器です。
僕自身はADHDと診断されたフロントエンドエンジニアで、年代でいえば50代ではありません。だから「50代のリアルな苦労を全部わかっています」とは言えません。でも、当事者として年齢を重ねながら働くことの不安や、これまで取材・相談で見聞きしてきた50代当事者の声、そして公的なデータからわかることはお伝えできます。
この記事を読むと、次のことがわかります。
希望論で励ますだけの記事にはしたくないので、厳しい現実もそのまま書きます。そのうえで、どう動けばいいかを一緒に整理していきましょう。
最初に、いちばん気になっているであろう「実際どうなの?」という話から始めます。
正直に言うと、年齢が上がるほど転職のハードルが上がるのは事実です。求人の選択肢は若い頃より確実に狭くなりますし、書類で年齢を見られて落とされる、という経験をする方もいます。これは発達障害の有無に関係なく、50代全般に起こることです。
ただ、ここで知っておいてほしいデータがあります。厚生労働省の障害者雇用に関する統計では、ハローワークを通じた就職件数のうち、40〜49歳が最も多く、50〜59歳も20〜29歳と同程度の件数があるとされています。つまり「50代の障害者は就職できていない」わけではなく、一定数の人がちゃんと次の職場を見つけているということです。
「もう遅い」と一括りにするのは、現実を正しく見ていない、というのが僕の考えです。狭き門であることは認めたうえで、門が閉ざされているわけではない、と捉えるところからスタートしたいんです。
とはいえ、ふわっと「大丈夫ですよ」と言われても安心できないですよね。50代の障害者の転職には、よく指摘される具体的な壁があります。整理すると次の通りです。
壁 | 中身 |
|---|---|
求人の絶対数 | 年齢を重ねるほど応募できる求人が減る |
体力・健康面の懸念 | 企業が「長く働けるか」を気にする |
環境適応への不安 | 新しい職場文化に馴染めるかを見られる |
若手優先の風潮 | 育てやすさで若い人が選ばれやすい |
年下上司との関係 | 指示する側・される側の年齢逆転 |
定年までの期間 | 採用しても在籍期間が短いと見なされる |
給与水準 | これまでの給与が高いと敬遠される |
こうして並べると気が滅入るかもしれません。でも、壁の正体がわかれば対策は立てられます。たとえば「体力面の懸念」は健康管理の実績で打ち消せますし、「年下上司との関係」は前職での具体的なエピソードで安心してもらえます。漠然と怖がっているうちは動けませんが、ひとつずつ分解すれば「これは準備できる」「これは諦める」と判断できるようになります。
ここまで読んで、思い当たる壁はありましたか。次の章では、これらの壁を越えるために50代だからこそ使える武器を見ていきます。
20代の転職は「ポテンシャル」を売るゲームです。でも50代は違います。ポテンシャルではなく、これまで積み上げた「実績」と「自己理解」を売るのが基本戦略になります。
企業が50代を採用するとき、いちばん期待しているのは即戦力性です。育てる時間もコストもかけずに、初日から戦力になってくれること。これは若い人には逆立ちしても出せない価値です。
ここで大事なのが、経験を「期間」ではなく「成果」で語ることです。
悪い例:「営業を25年やってきました」 良い例:「既存顧客のフォローで、担当エリアの解約率を3年で半分に下げました」
「25年やってきた」は、相手からすると「で、何ができるの?」で終わってしまいます。一方、具体的な数字や場面で語ると、相手は「うちでもこれをやってくれそうだ」とイメージできます。直近10年くらいの実績を中心に、数字で語れるエピソードを棚卸ししておくと、書類でも面接でも効いてきます。
自分の経験のどこが強みになるのか整理したい方は、発達障害の特性を活かせる職種15選|強みを仕事に変える適職ガイドもあわせて読んでみてください。特性と職種の相性を知っておくと、応募先の絞り込みがぐっと楽になります。
これは50代の発達障害当事者ならではの武器だと思っています。
20代で診断を受けたばかりの人は、まだ自分の特性をうまく言語化できないことが多いです。何が苦手で、どんな環境ならパフォーマンスが出るのか、手探りの段階にいます。
一方、長く働いてきた50代の方は、良くも悪くも「自分の取扱説明書」が頭の中にできています。
こうした自己理解は、面接で配慮事項を伝えるときに圧倒的な説得力を持ちます。「漠然と困っています」ではなく「この条件さえ整えば成果を出せます」と言えるからです。診断が遅かったことを後悔する方もいますが、長年の経験を通じて自分を理解できているのは、間違いなくプラスに働きます。
意外に思うかもしれませんが、企業によっては「すぐ辞めない人」を強く求めています。採用にはコストがかかるので、1〜2年で去られると企業も困るんです。
20代は転職を繰り返す前提で見られがちですが、50代は「腰を据えて長く働いてくれそう」と見てもらいやすい。これを面接で意識的に伝えると効果的です。
「この年齢での転職ですから、腰を据えて長く貢献したいと考えています」
ありきたりに聞こえるかもしれませんが、企業の不安を先回りして打ち消す一言として、地味に効きます。
ここまで一般論として武器を見てきましたが、50代の発達障害の転職を考えるとき、避けて通れないのが「一般雇用でいくか、障害者雇用枠でいくか」という選択です。
結論から言うと、50代では障害者雇用枠が有力な選択肢になりやすい、というのが正直なところです。理由はいくつかあります。
ひとつは、無理を続けにくくなることです。若い頃は気合いと体力で乗り切れた長時間労働や、苦手な業務のゴリ押しが、50代になると身体的にきつくなってきます。配慮のある環境で、自分の特性に合った働き方ができることの価値が、年齢とともに上がっていくんです。
もうひとつは、制度的な追い風です。民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へ引き上げられる予定です。企業は障害者雇用の枠を広げる必要に迫られていて、この流れは50代にとっても求人の選択肢が増える方向に働きます。
加えて、2024年4月から事業者による合理的配慮の提供が法的義務になりました(改正障害者差別解消法)。「配慮をお願いする」ことが、お願いというより当然の権利として位置づけられたわけです。これは特性を抱えながら働く50代にとって、大きな後ろ盾になります。
障害者雇用と一般雇用の違いをまだ整理できていない方は、障害者雇用とは?一般雇用との違い|発達障害者が知るべきメリット・デメリットを徹底解説で全体像をつかんでおくと、自分にどちらが合うか判断しやすくなります。
良い面ばかり書くのはフェアじゃないので、両面を表にまとめます。
メリット | 知っておきたい現実 |
|---|---|
特性への配慮を受けやすい | 給与水準は一般雇用より低めの傾向 |
通院や体調への理解がある | 任される業務が定型的になりがち |
長く安定して働きやすい | 求人エリアや職種が限られる場合がある |
手帳の取得が前提になる | 周囲への開示の範囲を考える必要がある |
ここで大事なのは、「給与が下がるかもしれない」というデメリットを、50代の人生設計の中でどう捉えるか、です。次の章で、その視点を掘り下げます。
なお、障害者雇用を利用するには原則として障害者手帳が必要になります。発達障害の場合は精神障害者保健福祉手帳が該当します。手帳の取得には医師の診断が前提となりますが、診断ができるのは医師だけです。自己判断せず、まずは専門の医療機関に相談してください。
50代の転職が20代や30代と決定的に違うのは、ゴール(リタイア)までの距離が見えている点です。これは制約でもあり、戦略の起点でもあります。
20代・30代は年収を上げて積み上げていくフェーズです。でも50代は、人によっては「ここから先、いくら必要か」を逆算できる時期に入ります。
たとえば、
こうした数字がある程度見えてくると、「年収を死守する」よりも「無理なく長く続けられて、必要な分を稼げる働き方」のほうが、人生の満足度を上げてくれることがあります。
僕は当事者として、過剰適応で消耗してしまう怖さを知っています。給料は高いけれど特性に合わない仕事を歯を食いしばって続けるのは、若いうちでも消耗しますし、50代ならなおさらです。年収を少し下げてでも、配慮のある環境で穏やかに働けるなら、それは「負け」ではなく合理的な選択だと思っています。
年金やセカンドキャリアにかかわるお金の話は、人によって条件が大きく変わります。一般的な記事の数字を鵜呑みにせず、必ずご自身のケースで確認してください。
このあたりは「たぶん大丈夫だろう」で進めると後で困ります。面倒でも、公的な窓口で自分の数字を確認する。それが結局、安心して次の一歩を踏み出すための近道です。
50代の働き方は、フルタイムの正社員だけが正解ではありません。
働き方 | 向いている人 |
|---|---|
障害者雇用の正社員 | 安定と配慮を両立したい |
契約社員・パート | 期間や時間を区切って働きたい |
専門性を活かした顧問・嘱託 | 特定分野の経験が深い |
在宅中心の働き方 | 通勤や対人の負荷を減らしたい |
「正社員じゃないと」と思い込んでいると、自分に合った働き方を見落としてしまいます。体力や特性と相談しながら、引き算で「これなら続けられる」を探していくのが、50代らしい賢いやり方だと感じます。
戦略の方向性が見えたところで、実際の転職活動で押さえておきたいポイントを、当事者目線で短くまとめます。
職務経歴書に25年分を全部詰め込むと、読み手は何が強みか判断できません。直近10年を中心に、数字で語れる成果を厳選して載せる。古い技術名や肩書きの羅列より、「今のあなたが何をできるか」が伝わる書き方を意識してください。
50代の面接では、聞かれなくても企業が内心で気にしていることがあります。「体力は?」「年下上司とやれる?」「すぐ辞めない?」の3つです。これらに対する答えを、エピソードつきであらかじめ用意しておくと、面接の空気が変わります。
「前職でも30代の上司のもとで働いていましたが、新しい視点をもらえてありがたかったです」
こんな一言が、相手の不安をすっと溶かしてくれます。
これがいちばん伝えたいことかもしれません。50代の転職活動は、孤独になりがちです。書類で落とされ続けると、「やっぱり自分はダメなんだ」と自己肯定感が削られていきます。
でも、年齢を理由に落ちるのは、あなたの人格が否定されたわけではなく、単にマッチングがずれていただけのことも多いんです。一人で抱え込むと、その区別がつかなくなって苦しくなります。だからこそ、第三者の力を借りることをおすすめします。
「50代でも応募できる求人があるのか知りたい」「特性をどう伝えれば配慮してもらえるのか不安」
そんなときは、発達障害の特性を理解した障害者雇用専門の転職エージェントに相談してみてください。50代の求人事情に詳しいアドバイザーが、あなたの経験を活かせる職場を一緒に探してくれます。無料で利用でき、求人紹介だけでなく、書類の書き方や面接の伝え方まで相談できます。
サービス | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
障害者雇用の求人数が業界最大級。発達障害専門のアドバイザーが在籍 | 選択肢を広く見たい方 | |
障害者転職支援の実績No.1。入社後の定着支援まで手厚い | じっくりサポートしてほしい方 |
どちらも無料で利用できます。まずは「50代でも応募できる求人はありますか?」と聞いてみるだけでも、視界がひらけます。
エージェント選びをもっと比較してから決めたい方は、発達障害向け転職エージェント7社比較|ADHD・ASD対応【2026年版】に各社の強みをまとめてあります。
最後に、この記事の要点を振り返ります。
50代からの転職を考える年代別の戦略は、もう少し若い世代も含めて40代以降の発達障害者の転職戦略|年齢を強みに変える方法で詳しく書いています。あわせて読むと、自分が今どのフェーズにいるのか整理しやすくなります。
僕は50代当事者ではないので、「あなたの気持ちが全部わかります」とは言いません。でも、特性を抱えながら年齢を重ねて働くことの不安は、当事者として痛いほど想像できます。そのうえで言いたいのは、50代で積み上げてきたものは、決して無駄ではないということです。
「もう遅い」ではなく「ここから、自分に合った働き方を選び直す」。そう捉え直せたとき、選択肢は思っているより広いはずです。焦らず、一人で抱え込まず、使えるものは使って、あなたらしい次の一歩を見つけてください。
この記事の制度・統計情報は、厚生労働省の障害者雇用関連資料および2026年6月時点の公開情報を基に作成しています。診断は医師のみが行えます。お金や年金にかかわる判断は、年金事務所・ハローワーク等の公的窓口でご自身の条件をご確認ください。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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