発達障害で履歴書が書けないときの対処法|手が止まる原因と書き出すコツ

履歴書のファイルを開いて、もう30分。氏名と日付だけ埋めて、そこから一文字も進んでいない。
そういう経験、ありませんか。僕はあります。何度もあります。転職5回のうち、たぶん全部の応募で、最初の1枚目に異常な時間がかかっていました。書くこと自体が嫌というより、「何を、どこまで、どう書けばいいのか」が決まらなくて、カーソルが点滅しているのをただ眺めている時間が長かったんです。
僕はADHDと診断された現役のフロントエンドエンジニアで、一般枠で働いています。コードは書けるのに、自分の経歴を書く書類になると途端に手が止まる。あの感覚は、いまだに思い出すと少ししんどいです。
この記事は、履歴書や職務経歴書の「書き方」そのものを解説する記事ではありません。各欄をどう埋めるか、写真は、志望動機は、という具体的な書き方は、別記事の履歴書・職務経歴書の書き方完全ガイドにまとめてあります。
ここで扱うのは、その手前。そもそも書き始められない、手が止まる、何を書けばいいかわからないという状態そのものを、どうほぐすかです。読み終わるころには、「とりあえず汚くていいから一行書いてみるか」と思えるはずです。
なぜ発達障害(ADHD・ASD)だと履歴書・職務経歴書で手が止まるのか
最初に言っておきたいのは、書けないのはあなたの怠けでも能力不足でもない、ということです。発達障害の特性と、履歴書という作業の相性が、もともとかなり悪い。理由を分解すると、自分を責める気持ちが少し軽くなると思います。
ADHD|「いつか完璧に書こう」が先延ばしを呼ぶ
ADHDには不注意・多動性・衝動性といった特性があり、興味の持てない・締め切りの遠い作業を後回しにしやすい傾向があります。履歴書はまさにそれで、応募という明確な締め切りが来るまで、脳が動き出してくれません。
さらにやっかいなのが完璧主義です。意外かもしれませんが、ADHDの先延ばしには「完璧にやろうとして、できないから手を付けられない」というパターンがけっこうあります。僕もそうでした。「どうせ書くなら、採用担当が唸るような職務経歴書を一発で」と勝手にハードルを上げて、そのハードルが高すぎて飛べず、結局期限ギリギリまで放置する。最悪のループです。
手が止まる原因が先延ばしや完璧主義にあると感じる方は、ADHDの先延ばし癖を克服する方法もあわせて読んでみてください。書類作成にそのまま使える考え方が多いです。
ASD|「どこまで書くべきか」の線引きで固まる
ASDの傾向があると、「正解」がはっきりしない作業で固まりやすいです。履歴書の自己PRや職務要約には、明確な正解がありません。どこまで詳しく書くのか、何を省くのか、その線引きを自分で決めるのが負担になります。
「全部正確に書かなきゃ」と思うと、業務の細部まで書き連ねて膨大になる。逆に「何が重要か判断できない」と、何も書けなくなる。どちらに転んでも手が止まります。
自分の経験を言葉にするのが苦手、というのもあります。やってきた仕事を「自分の言葉でアピールに変換する」工程が、特性的にしんどいんです。
共通|「書くことがない」と感じてしまう自己肯定感の低さ
ADHD・ASDのどちらにも、そして僕自身にも共通していたのが、これです。「書くようなことなんて、何もない」。
転職を繰り返していたり、ミスで叱られた記憶が多かったりすると、自分の経歴を「失敗の記録」のように感じてしまいます。本当はやってきたことがあるのに、自己評価が低いせいで、それが見えなくなる。空白のように感じる。
これは事実というより、認知のクセです。あとで触れますが、「書くことがない」は思い込みであることがほとんどです。
ここまで読んで、「全部当てはまる」と感じた方もいると思います。次は、そのうえで実際に手を動かし始めるための、ハードルの下げ方を書きます。
手が止まるあなたへ|書き出すためのハードルの下げ方
特性は変えられません。でも、作業のやり方は変えられます。僕が5回の応募を経て、ようやくたどり着いた「とりあえず書き出す」ためのコツを並べます。全部やる必要はなくて、一つ刺さればそれで十分です。
手書きをやめて、パソコン(データ)で作る
「書けない」が、誤字のたびに最初から書き直しになる・書き上げた履歴書をなくす、という物理的な書けないなら、答えはシンプルです。手書きをやめてください。企業から手書きの指定がない限り、データ(PC)作成の履歴書で問題ありません。誤字は直せるし、使い回しもできるし、なくなりません。不注意特性があるなら、むしろPC作成が標準装備です。
完璧を捨てて、まず「汚い初稿」を作る
これが一番効きました。最初から提出できる履歴書を書こうとしない。誤字だらけ、文章になっていない、箇条書きの断片でいい。とにかく一回、頭の中身を全部外に出す。
履歴書は、初稿で完成させるものではありません。後で必ず直します。なんなら、後で紹介する転職エージェントに添削してもらう前提で、まず空欄を埋めるだけでいい。「これは下書きの下書きだ」と自分に言い聞かせると、不思議とカーソルが動き出します。
いきなり文章にせず、箇条書きで素材を集める
職務要約や自己PRを、最初から完成文で書こうとすると固まります。順番が逆なんです。先に素材を、箇条書きで散らかしておく。
たとえば職歴なら、こんな粒度で十分です。
- 〇〇会社、3年、データ入力と電話対応
- ミスが減るようにチェックリストを自作した
- 後輩にマニュアルを作って渡した
文章にするのは最後の工程。まずは「やったこと」の断片を、思いつくままにメモアプリに放り込む。きれいに並べなくていい。あとで使えそうなものだけ拾えばいいんです。
時間を区切る|「15分だけ」やってみる
「履歴書を完成させる」は大きすぎて、脳が拒否します。だから目標を「タイマーを15分セットして、その間だけ手を動かす」に置き換えます。終わったらやめていい。
ADHDの特性として、いったん始めると意外と続けられる「作業興奮」があります。動き出すまでが一番重いので、その最初の一押しだけを15分で突破する作戦です。僕は職務経歴書を書くとき、いつもキッチンタイマーを使っていました。
音声入力やAIに「下書き役」をやってもらう
書くのがしんどいなら、しゃべる。スマホの音声入力に向かって、「前の会社では3年、経理事務をやってて、毎月の請求書処理を担当してて…」と話したものを、あとで整える。手で書くより圧倒的にハードルが低いです。
生成AIに「こういう経歴なんだけど、職務要約の下書きを作って」と頼むのもありです。ただし、出てきた文章を鵜呑みにして提出するのは危険です。AIは平気で経歴を盛ったり、あなたが言っていないことを書いたりします。あくまで「言語化のとっかかり」として使い、中身は必ず自分の事実に直してください。
ここまでで、とにかく一行書き出す方法は揃いました。でも、書き進めると必ずぶつかる「難所」があります。次はそこです。
詰まりやすい4つの難所|空白期間・転職回数・職歴の短さ・特性の書き方
履歴書が止まる原因の多くは、特定の欄に集中しています。多くの人が同じ場所で固まる。ここではその難所を、具体的な記入例というより「どう考えればいいか」という心の持ち方の話として整理します。実際の書き方やテンプレは、後でリンク先に任せます。
難所1|空白期間(ブランク)をどう書くか
療養していた、体調を崩していた、何もできなかった時期がある。そのブランクをどう書けばいいかわからなくて、そこで手が止まる人は本当に多いです。
考え方として持っておきたいのは、空白期間そのものより、それを隠したり嘘でごまかしたりするほうが印象が悪いということです。採用担当が気にするのは、空白があった事実より、「今は働ける状態なのか」「同じことが起きないか」です。
だから方向性としては、事実を簡潔に書いて、「今は回復して働ける」「再発を防ぐためにこういう工夫をしている」と未来に接続する。長々と言い訳しない。深刻に書きすぎない。空白期間に通院・リハビリ・資格の勉強など、少しでもやったことがあれば、それを書く。
具体的にどんな一文で書くかは、発達障害の履歴書 記入例・テンプレート集にブランクの記入例をそのまま使える形で置いてあるので、文面はそちらをコピペして調整してください。
難所2|転職回数が多いときの見せ方
「また転職回数がネックになる」と思うと、職歴欄で手が止まります。僕も5回転職しているので、この気持ちはよくわかります。
ただ、転職回数の多さは、書き方次第で受け取られ方が変わります。一社ごとにバラバラの仕事に見えると「またすぐ辞めそう」と思われますが、回数が多くても一本の筋が通っているように見せれば、印象はかなり変わります。
たとえば僕の場合、転職のたびに「より自分の特性に合った働き方」を選んできた、という軸がありました。職種がバラついていても、「なぜ動いたのか」に一貫性があれば、それは弱みではなく「自分を理解して環境を選べる人」という強みに翻訳できます。
転職回数を不利にしない見せ方は、職務経歴書の構成(編年体式かキャリア式か)にかかわる話なので、発達障害の職務経歴書|配慮事項の伝え方と7ステップが詳しいです。
難所3|職歴が短い・「アピールすることがない」と感じるとき
これが一番、自己肯定感を削る難所だと思います。「短期間しか働いていない」「特別な実績なんてない」と感じて、自己PR欄の前で完全にフリーズする。
でも、さっきも書いたとおり「書くことがない」はだいたい思い込みです。実績って、表彰されたとか売上を倍にしたとか、そういう派手なものだけじゃない。
- 遅刻せず通い続けた
- ミスを減らす自分なりの工夫をした
- 苦手な作業を仕組みでカバーした
こういう地味なことが、立派なアピール材料になります。発達障害があってミスや遅刻と向き合ってきた人ほど、自分なりの「対処の工夫」を持っているはずで、それは採用担当が知りたい情報そのものです。
「自分には何もない」から抜け出すには、過去を一度ちゃんと棚卸しするのが効きます。自己分析・強み発見ワークに、当事者向けの問いかけをまとめてあるので、書くことが見つからないときはここから始めるのをおすすめします。
難所4|特性をどう書くか迷うとき
「自分の特性を、書類にどこまで・どう書けばいいのか」。これも手が止まる定番ポイントです。
ここは一般枠か障害者雇用枠かで考え方が分かれます。僕は一般枠で働いてきたので、診断名そのものを書類に書いたことはありません。ただ、「仕事の進め方の希望」という形で、自分が力を出しやすい条件を伝えるようにはしてきました。
障害者雇用枠で配慮事項として書く場合は、「できないことの羅列」ではなく「こうしてもらえれば力を発揮できる」という形にするのがコツです。この配慮事項の書き方は奥が深いので、専用の記事職務経歴書|配慮事項の伝え方に、NG例とOK例を並べて詳しく解説しています。特性の書き方で固まっている人は、ここが一番役に立つはずです。
なお、面接でどう伝えるかとセットで考えたい人は、発達障害を面接で伝える完全ガイドも参考になります。
ここまで読んで、書き進める道筋は見えてきたでしょうか。でも、書類づくりがしんどいのは、技術の問題だけじゃないですよね。最後に、メンタルの話をさせてください。
書類選考に落ち続けてつらいときに
正直に書きます。書けない時期より、書けたのに落ち続ける時期のほうが、僕はきつかったです。
応募して、お祈りメールが来て、また応募して、また落ちる。これが続くと、不採用が「人格の否定」みたいに感じられてくる。「やっぱり自分はダメなんだ」「どこにも必要とされていない」と、書類の出来とは関係ないところまで自分を責めてしまう。
でも、書類選考の不採用は、あなたの価値の否定ではありません。会社が見ているのは、その時その会社が求める条件と、書面の情報がマッチするかどうか、それだけです。タイミングや募集人数や、その時たまたま他に経験者がいたか。そういう、あなたにはどうしようもない要素で結果は揺れます。
それに、落ち続けるのは「書類が事実を伝えきれていない」だけのことも多いんです。あなたの良さが、紙の上で言語化されていないだけ。中身がダメなんじゃなくて、伝え方の問題。これは直せます。
不採用が続いてしんどいときは、無理に量で押し続けないでください。一回手を止めて、書類そのものを誰かに見てもらうほうが、結果的に近道です。
一人で書けないなら、添削に頼っていい
ここまで「自分で書き出すコツ」を書いてきましたが、最後にこれだけは伝えたいです。一人で全部抱える必要はありません。
履歴書や職務経歴書は、自分一人で完璧に仕上げるものだと思い込みがちですが、転職エージェントを使えば、プロが無料で添削してくれます。とくに障害者雇用も視野に入れているなら、発達障害に理解のある専門エージェントが心強いです。彼らなら、
- 散らかった初稿を、伝わる文章に整理してくれる
- 空白期間や転職回数を、不利にならない見せ方に直してくれる
- 「書くことがない」と思っていた経歴から、強みを一緒に掘り出してくれる
つまり、この記事で書いてきた「難所」を、伴走しながら越えてくれます。汚い初稿さえあれば、あとはプロと一緒に磨けばいい。むしろ、添削前提で「とりあえず埋める」と決めてしまえば、書き出すハードルそのものが下がります。
僕自身、自分の経歴を客観的に評価してもらって初めて、「これ、書いていいことだったのか」と気づいたことが何度もありました。一人だと自分を過小評価しがちなので、第三者の目はそれだけで価値があります。
履歴書の添削に強い転職エージェント
どこに相談すればいいか迷う方のために、書類の添削とサポートに定評のある2社を挙げておきます。どちらも無料で、在籍したまま相談だけすることもできます。
サービス | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
障害者雇用の求人数が業界最大級。発達障害専門のアドバイザーが書類作成から伴走 | 選択肢を広げつつ書類も整えたい方 | |
障害者転職支援の実績No.1。応募書類の添削や面接対策のサポートが手厚い | じっくり手厚く見てほしい方 |
どちらも無料です。「書類が一人で書けなくて困っている」と正直に伝えれば大丈夫です。プロはそういう相談に慣れています。
転職活動全体でつまずかないためのポイントは、発達障害の転職で失敗しない7つのポイントにまとめてあるので、書類が一段落したら目を通しておくと安心です。
よくある質問(Q&A)
Q. どうしても1行目から書き出せません。何から手を付ければいいですか?
A. いきなり履歴書のフォーマットを埋めようとせず、まっさらなメモアプリに「やってきた仕事」を箇条書きで放り込むところから始めてみてください。書類の枠に合わせようとすると固まるので、最初は枠を無視して素材集めに徹するのがコツです。
Q. 空白期間が長くて、正直に書くのが怖いです。
A. 隠したり嘘で埋めたりするほうが、後でわかったときの印象は悪くなります。事実を簡潔に書いて、「今は働ける状態である」ことが伝われば十分です。療養や勉強など、その期間にやったことがあれば添えると、前向きに受け取られやすくなります。そのまま使える文面は発達障害の履歴書 記入例・テンプレート集に置いてあります。
Q. 生成AIに履歴書を書かせてもいいですか?
A. 下書きのとっかかりとして使うのはありです。ただ、AIは事実にないことを書いたり経歴を盛ったりするので、出てきた文章は必ず自分の事実に直してください。中身が本人の経験とずれていると、面接で必ずほころびます。
Q. アピールできる実績が本当に何もありません。
A. 「実績」を派手なものだと思いすぎている可能性が高いです。遅刻せず通った、ミスを減らす工夫をした、苦手を仕組みでカバーした。こうした地味な積み重ねが立派なアピールになります。自己分析・強み発見ワークで過去を棚卸しすると、見つかることが多いです。
まとめ|汚い初稿を一行、それで十分です
最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。
- 履歴書で手が止まるのは怠けではなく、発達障害の特性(先延ばし・完璧主義・線引きの難しさ・自己肯定感の低さ)と作業の相性の悪さが原因
- 完璧をやめて汚い初稿を作る。文章にせず箇条書きで素材を集め、時間を区切り、音声入力やAIを下書き役に使う
- 空白期間・転職回数・職歴の短さ・特性の書き方という難所は、「どう書くか」より先に「どう考えるか」で固さがほぐれる
- 書類選考の不採用は人格の否定ではない。伝え方の問題なら直せる
- 一人で無理なら、無料で添削してくれるプロに頼っていい
僕も昔は、カーソルの点滅をただ眺めている人間でした。でも、「完成させなきゃ」をやめて「とりあえず汚く一行」に切り替えてから、ようやく書類が前に進むようになりました。
今この記事を読んでいるあなたも、今日いきなり完璧な履歴書を仕上げる必要はありません。まず一行、汚くていいから書いてみる。それで十分です。その一行が、止まっていた手を動かし始めるはずです。
この記事を書いた人|りく ADHDと診断された現役フロントエンドエンジニア。地方在住・フルリモート勤務、年収1200万。これまで5回の転職を経験し、そのたびに履歴書・職務経歴書の前で手が止まってきました。「特性は変えられなくても、書き方と頼り方は選べる」をモットーに、当事者目線でキャリア情報を発信しています。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
りく
- ADHD当事者
- 転職5回経験
- 現役エンジニア
- フルリモート勤務
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収1200万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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