「在宅で働けたら、きっと今よりずっとラクになる気がする」
でも、いざ調べてみると出てくるのは「Webデザインで稼ぐ」「プログラミングで月収◯◯万」みたいな話ばかり。スキルゼロ・未経験の自分には、どれも遠い世界の話に見えませんか。
僕も同じでした。ADHDと診断されているフロントエンドエンジニアで、今でこそ地方からフルリモートで働いていますが、最初から在宅でバリバリ稼げたわけではありません。何から手をつければいいのか分からず、情報の海でただ溺れていた時期があります。
この記事は、その溺れている状態から抜け出すための「順番」を整理したものです。職種を並べて「どれが向いてる?」と選ばせるのではなく、完全未経験・スキルなしの人が、在宅で働けるようになるまでに何を・どの順番でやればいいのか。そのロードマップに絞って書きます。
この記事を読み終えると、「自分はまず何から準備すればいいのか」が具体的な4ステップで見えるようになります。焦らなくて大丈夫です。一歩ずつ進めていきましょう。
先に正直なところを言っておきます。
未経験・スキルなしから在宅ワークを始めることは、十分に可能です。データ入力や簡単な事務作業など、特別な資格がなくても始められる仕事は実際に存在します。「未経験OK」「初心者歓迎」と書かれた在宅の仕事は、探せばちゃんとあります。
ただし、最初から大きく稼げるかというと、そこは誇張せずに伝えたいところです。たとえば在宅のデータ入力は、文字数で単価が決まる案件が多く、はじめのうちは報酬が低めになりがちです。未経験で応募できる仕事ほど、同じように未経験の人が大勢応募してくるので、競争もあります。
だから、最初のゴールを「いきなり在宅で生活費を全部稼ぐ」に置くと、ほぼ確実に挫折します。そうではなく、
まずは「在宅で仕事を一つでも完了させた」という小さな実績を作る
ここを最初のゴールにすると、急に現実的になります。小さな成功体験を一つ積めると、自己肯定感が回復して、次のステップに進む力が湧いてきます。これは僕自身が体験してきたことでもあります。
発達障害のある方は、できないことに目が向きやすく、「また失敗するかも」という不安で動けなくなりがちです(診断は医師にしかできませんが、特性としてこの傾向に心当たりがある方は多いはずです)。だからこそ、ゴールを小さく刻む進め方が効いてきます。
なお、在宅という働き方そのものが発達障害とどう相性がいいのかは、発達障害者にとってフルリモートは天国だった件で当事者の本音を書いています。「そもそも在宅って自分に合ってるのかな」と迷っている段階の方は、先にそちらを読むと、これから紹介するステップに進む気持ちの整理がつくと思います。
では、具体的なロードマップに入ります。
やることを4つのステップに分けました。順番が大事なので、飛ばさずに上から進めるのがおすすめです。
ステップ | やること | ゴールの目安 |
|---|---|---|
① 自己理解 | 特性・体調・使える時間を棚卸しする | 自分の「働ける条件」が言語化できる |
② スキルを小さく1つ | PC基本操作・タイピング・基礎事務などを1つだけ習得 | 「これならできる」が1つ持てる |
③ 小さく実績を作る | 在宅訓練・練習案件で「完了させた経験」を積む | 完了した仕事が1件できる |
④ 在宅可の求人へ応募 | 在宅可の一般求人/障害者雇用の在宅求人に応募 | 応募・面談まで進む |
ポイントは、①の自己理解を飛ばさないことです。多くの人がいきなり②のスキル習得や④の応募から始めて、「やっぱり続かなかった」となります。自分の特性や体調を無視して進めると、せっかく動き出しても途中で潰れてしまうからです。
一つずつ見ていきます。
最初にやるのは、勉強でも求人探しでもありません。自分という素材を知ることです。
ここを丁寧にやると、後のステップで「自分に合わない仕事に突っ込んで消耗する」事故をかなり防げます。
紙でもスマホのメモでもいいので、次の3つを書き出してみてください。
正直、これを書き出す作業はちょっと面倒です。僕も最初は「そんなのやらなくても」と思っていました。でも、あとから「自分は午前中しか頭が動かない」とか「単純作業の繰り返しは過集中できるけど、人とのやりとりが多い仕事は半日で消耗する」といった自分のクセが見えてきて、仕事選びの軸になりました。
ここで発達障害のある方がハマりやすい罠が一つあります。それは「完璧な自己分析をしてから動こう」として、いつまでも動けなくなるパターンです。
自己理解は一回で完成しません。動きながら更新していくものです。だから最初は「だいたいこんな感じ」で十分。今書けるところだけ書いて、次に進んでしまってください。
なお、自分一人で棚卸しするのが難しいと感じたら、専門家と一緒にやる方法もあります。後で紹介する就労移行支援では、こうした自己理解のサポートも受けられます。「一人だと客観的に見られない」という方は、その手があることを覚えておいてください。
ここまで読んで、「自分はどんな条件なら働けるんだろう」と少し考えられたでしょうか。それが言葉になってきたら、次のステップに進みます。
自己理解ができたら、次はスキルです。といっても、いきなりプログラミングやWebデザインのような大きなスキルを目指す必要はありません。
ここで狙うのは、未経験から在宅の入口に立てる、低ハードルなスキルを1つだけ身につけることです。
未経験から在宅を目指すうえで、土台になりやすいのはこのあたりです。
「なんだ、地味だな」と思ったかもしれません。でも、この地味なところがちゃんとできる人は、未経験者の中でも意外と少ないんです。だからこそ、最初の差別化になります。
ここで大事にしてほしいのが、一度に詰め込まないことです。
発達障害のある方は、興味のあることには過集中できる一方、複数のことを並行して進めるのが苦手な場合があります。「タイピングもExcelも文章も全部いっぺんに」とやると、たいてい全部中途半端になって嫌になります。
だから「1つだけ」です。たとえば最初の2週間はタイピングだけ、次はスプレッドシートだけ、というふうに直列で進める。学ぶ内容を1つに絞ると、達成感も得やすくなります。
学習の進み具合は、可視化すると続きやすくなります。「今日はここまでやった」をチェックリストやカレンダーに残すと、自分の頑張りが目に見えて、ADHD特性のある方ほどモチベーションが保ちやすくなります。
最初は無料の教材で十分です。タイピング練習サイトや、無料のExcel・スプレッドシート入門動画など、お金をかけずに始められるものがたくさんあります。まずはそこから手をつけてみてください。
ただ、独学には一つ大きな弱点があります。サボっても誰も困らないので、続かないことです。これは意志の弱さではなく、構造の問題です。「いつでもできる」は「いつまでもやらない」になりがちなんですよね。
「一人だと続かない」「在宅で働く練習も含めて、誰かに伴走してほしい」という方には、在宅訓練に特化した就労移行支援という選択肢があります。なかでもmanaby(マナビー)は、事務・デザイン・プログラミングなど幅広いeラーニング動画を、自分のペースで学べる仕組みになっています(manaby公式)。在宅での学習・支援を受けられる体制があるので、通所が難しい方や体調に波がある方でも、自宅から準備を進められます。
見学や体験は無料で、eラーニングを実際に視聴したり、プログラムを試したりできます。「自分に合うか分からない」段階でも、まず雰囲気を見るだけで大丈夫です。
ちなみに就労移行支援は、多くの方が無料で利用できます。利用料は前年の世帯収入に応じて決まり、住民税非課税世帯や生活保護世帯は無料。約9割の方が自己負担なしで使っているといわれています(出典:LITALICO仕事ナビ 就労移行支援の利用料)。「お金がかかるんでしょ?」と尻込みしている方は、まず自分が無料対象かどうかを確認してみてください。
なお、もしあなたが「事務やデータ入力ではなく、エンジニアのようなハイスキルを身につけて在宅で稼ぎたい」と考えているなら、この記事の範囲を超えます。その場合は未経験から発達障害エンジニアになる方法|学習ロードマップのほうが具体的です。本記事はあくまで「まず在宅の入口に立つ」ためのロードマップなので、目指す先で読み分けてください。
スキルの土台ができたら、次は「実際にやってみて、完了させる」経験です。
ここが、頭でっかちにならずに前へ進めるかどうかの分かれ目です。学習だけ延々と続けて、いつまでも本番に進めない人は多い。完璧に準備してから、と思っているうちに動けなくなるパターンですね。
未経験で求人に応募したとき、採用側がいちばん不安に思うのは「この人、最後までやり切れるのかな」という点です。だから、小さくても「在宅で仕事を完了させた経験」が一つあるだけで、説得力がまるで変わります。
そして何より、自分自身のためです。一度でも「自分は在宅で仕事を完了できた」という事実があると、それが心の支えになります。発達障害のある方は失敗体験を積み重ねて自信を失っているケースが多いので、この小さな成功体験の価値は本当に大きいです。
実績の作り方は、大きく2つに分かれます。
ルートA:就労移行支援などの「在宅訓練」で練習する
いきなり本番の案件は不安、という方は、就労移行支援の在宅訓練で「働く練習」をするのが安全です。manabyのような在宅対応の事業所では、決まった時間に作業に取り組み、報告・連絡・相談をする、という在宅ワークの基本動作を、サポートを受けながら練習できます。
ここで「毎日決まった時間に作業を始める」「困ったら相談する」といったリズムを体に入れておくと、本番でつまずきにくくなります。発達障害特性で生活リズムや自己管理に不安がある方ほど、この段階を踏む価値があります。
ルートB:クラウドソーシングの簡単な案件を1件やってみる
ある程度自信がついたら、クラウドソーシングサイトで未経験OKの簡単な案件を1件だけやってみる方法もあります。データ入力や簡単なアンケート回答など、マニュアルが用意されている案件から選ぶと、つまずきにくいです。
ここでも欲張らないのがコツです。単価や件数は気にしない。目的は「1件、最後まで完了させる」こと。それだけです。
最初の1件は、稼ぐためではなく「自分にもできた」を証明するためにやる
この意識でいると、低単価でも心が折れません。
ステップ②・③は、就労移行支援を使うと一気通貫でサポートしてもらえるので、「独学では絶対に続かない自信がある」という方は、ここで一度プロの伴走を検討してみてください。
在宅でスキル習得から就職までサポートしてもらう(無料見学)→
就労移行支援そのものがどんな仕組みなのか、もっと詳しく知りたい方は就労移行支援とは?発達障害者が利用すべき理由と選び方で全体像を解説しています。あわせて読むと、自分が使うべきかどうかの判断がしやすくなります。
スキルの土台と、小さな実績ができたら、いよいよ求人への応募です。
ここで知っておいてほしいのは、在宅で働くルートは一つではないということです。
一般雇用(クローズ/オープン)で在宅可の求人を探す
普通の求人サイトでも「在宅可」「フルリモート」で絞れる求人は増えています。クラウドソーシングで継続的な案件をもらえるようになるのも、この延長線上にあります。
障害者雇用で在宅可の求人を探す
もう一つが障害者雇用枠です。近年は障害者雇用でも在宅勤務OKの求人が出てきています。背景として、民間企業の障害者の法定雇用率は2024年4月に2.5%へ引き上げられ、さらに2026年7月から2.7%へ上がる予定です(出典:厚生労働省)。企業側も障害のある人材の採用に動いているタイミングなんです。
加えて、2024年4月からは民間企業にも合理的配慮の提供が法的に義務づけられました(出典:政府広報オンライン)。「通院のために時間を調整したい」「指示は口頭ではなく文字でほしい」といった配慮を、求人応募の段階から相談しやすくなっています。
ここで僕が強くおすすめしたいのは、求人探しを一人で抱え込まないことです。
未経験での在宅求人探しは、正直しんどいです。求人票を読んでも在宅の実態が分からなかったり、応募書類で自分の特性をどう書けばいいか迷ったり。発達障害のある方は、こうした「正解の見えない作業」が特に消耗しやすい。
そこで、障害者雇用の在宅求人を探すなら、発達障害に理解のある転職エージェントに相談するのが近道です。求人の紹介だけでなく、書類の書き方や、面接での特性の伝え方まで一緒に考えてくれます。しかも無料で使えます。
たとえばdodaチャレンジは障害者雇用の求人数が業界最大級で、在宅可の求人も含めて選択肢を広げやすいです。「実績豊富なところで手厚くサポートしてほしい」なら、障害者転職支援の実績No.1を掲げるatGPも候補になります。どちらも登録・相談は無料なので、両方に登録して在宅求人を比べるのが賢い使い方です。
求人選びの段階で「どんな職種が在宅向きか」「快適に働くにはどんな環境を整えればいいか」を具体的に知りたくなったら、発達障害者の在宅ワーク完全ガイドが役に立ちます。本記事が「在宅で働けるようになるまでの順番」なら、あちらは「働き始めてからの中身」を扱っているので、セットで読むと全体像がつながります。
ロードマップを進めるうえで、発達障害の特性とケンカしないためのコツを3つだけ。これは僕自身が遠回りして学んだことです。
1. 一度に詰め込まない
何度も書いていますが、これが本当に大事です。ステップを飛ばさず、1つずつ。「今週はこれだけ」と範囲を区切ると、過集中もいい方向に働きます。
2. 進捗を「見える化」する
頭の中だけで管理しようとすると、ADHD特性のある方はすぐに「あれ、何やってたっけ」になります。チェックリスト、カレンダー、付箋。何でもいいので、やったことが目に見える形で残るようにしてください。「できた」が見えると、続きます。
3. 相談先を必ず1つ持つ
一人で全部やろうとしないこと。これがいちばん効きます。家族でも、就労移行支援の支援員でも、転職エージェントの担当者でもいい。「困ったときに聞ける人」が一人いるだけで、つまずいたときに立ち直る速さがまったく違います。
発達障害のある方は、「人に頼るのが苦手」「迷惑をかけたくない」と抱え込みがちです。でも、ここでいう相談先はあなたを支えるのが仕事の相手です。遠慮はいりません。
ここまで「一人でやらない」を繰り返してきました。最後に、ステップ別にどのサービスを頼ればいいかを整理しておきます。
段階 | サービス | こんな人に |
|---|---|---|
②③ スキル習得・在宅訓練 | 通所が難しい・体調に波がある/自分のペースで在宅でスキルを学びたい | |
④ 在宅求人を探す | 障害者雇用の在宅求人で選択肢を広げたい | |
④ 在宅求人を探す | 実績豊富なところで手厚くサポートしてほしい |
いずれも相談・見学・登録は無料です。「まだ何も決まっていない」段階でも問題ありません。まずは話を聞いてみるところから始めてみてください。
就労移行支援や転職エージェントを横並びで比較したい方は、発達障害者向け就労支援サービス徹底比較もあわせてどうぞ。自分の状況に合うサービスを選ぶ手助けになります。
最後に、この記事のロードマップをもう一度おさらいします。
未経験・スキルなしからの在宅ワークは、「いきなり稼ぐ」を狙うと折れます。でも、ゴールを小さく刻んで、順番どおりに進めば、ちゃんとたどり着けます。
僕も最初は何者でもありませんでした。一歩目はいつだって地味で、不安なものです。でも、その地味な一歩を踏み出した人だけが、半年後・1年後に景色を変えています。
今日できる一歩は、自己理解の3項目を書き出すことかもしれないし、無料で見学の予約を入れることかもしれません。完璧じゃなくていいので、できるところから始めてみてください。応援しています。
この記事を書いた人 ADHDと診断されたフロントエンドエンジニアです。低学歴・転職多めの地方在住ですが、今はフルリモートで働いています。未経験から在宅にたどり着くまでの遠回りも含めて、当事者の視点で記事を書いています。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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