
「発達障害かもしれないけど、診断を受けたわけじゃない」「でも、毎日なんだか働きづらい」
そんなモヤモヤを抱えて、この記事にたどり着いた方が多いんじゃないかと思います。
正直に言うと、僕も同じでした。今はADHDと診断されたフロントエンドエンジニアとして働いていますが、診断を受ける前の数年間は、自分が何に困っているのかすら言葉にできないまま、「なんでこんなに仕事が続かないんだろう」と一人でぐるぐる悩んでいました。当時の自分は、まさに「グレーゾーン」と呼ばれる状態だったと思います。
この記事では、診断があってもなくても関係なく、「今ある働きづらさをどう扱うか」「これからどんな働き方を選べばいいか」を一緒に考えていきます。セルフチェックや診断の受け方そのものには深入りしません。それより、「診断を待たずに、今のしんどさをどう軽くするか」に軸を置いてお話しします。
読み終わるころには、「自分は今、どの選択肢を取れるのか」が少し見えてくるはずです。
最初に、ひとつだけ正確にしておきたいことがあります。
「グレーゾーン」は、正式な診断名ではありません。DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)にも、ICD-11にも、「グレーゾーン」という病名は載っていません。あくまで通称で、おおまかには「発達障害(ADHDやASD)の特性はあるけれど、医学的な診断基準をすべては満たさない(あるいは、まだ受診・診断をしていない)状態」を指す言葉として使われています。
ここを誤解してほしくないのですが、グレーゾーン=特性が軽い、困りごとが小さい、ということではありません。
診断基準は「いくつ以上の項目が、いつから、どの程度の困難をもって現れているか」といった線引きで決まります。その線をわずかに下回るだけで、日々の働きづらさは診断を受けた人とほとんど変わらない、というケースは本当に多いんです。「病院で"診断がつくほどではない"と言われた。でも仕事では毎日つらい」という声を、僕は何度も見聞きしてきました。
なお、診断は医師にしかできません。この記事も含めて、ネットの情報やセルフチェックで「自分は発達障害だ/違う」と断定することはできない、という前提だけは押さえておいてください。
「グレーゾーンって、結局なんなの?」と感じるのは当然です。線引きが曖昧なものに、無理に自分を当てはめる必要はありません。大事なのは病名より、「今、何に困っているか」です。
ここで少し、当時の自分の話をさせてください。
僕が一番つらかったのは、「困っているのに、困っている理由を説明できない」ことでした。会議の内容が頭に入ってこない。優先順位がつけられず、締め切り直前にいつも青ざめる。それなのに、上司に相談しても「みんな同じだよ」「もっと気合い入れて」で終わる。自分でも「甘えなのかな」と思い込んで、ますます言い出せなくなる。今振り返ると、あれはかなりしんどい状態でした。
グレーゾーンの働きづらさには、診断のある人とは少し違う、独特の構造があります。
2024年4月から、民間の事業者にも障害のある人への「合理的配慮」の提供が法的に義務づけられました(障害者差別解消法の改正による。罰則はないものの、行政から指導・勧告が行われる可能性があります)。出典は政府広報オンラインで確認できます。
ただ、これはあくまで「障害のある人」が対象です。診断や手帳がないグレーゾーンの段階だと、制度上は「配慮を求める根拠」を持ちにくく、職場に理解されにくいのが現実です。同じように困っていても、線の内側か外側かで扱いが変わってしまう。ここに、グレーゾーン特有のもどかしさがあります。
診断という説明がない分、「努力不足」「性格の問題」と自分を責めてしまいがちです。これが積み重なると、自己肯定感がどんどん削られていきます。
僕自身、診断を受けて一番ラクになったのは、薬でも配慮でもなく、「これは僕の人格の欠陥じゃなくて、脳の特性なんだ」と思えたことでした。原因が自分の外側にあると分かるだけで、心の重さがずいぶん変わります。この自責の積み重ねを放っておくと、うつや不安障害といった二次障害につながることもあります。気になる方は発達障害の二次障害を防ぐ方法|うつ・不安障害になる前に知っておきたい予防と対処法も読んでみてください。
困りごとを隠して周囲に合わせ続けると、いわゆる「過剰適応」の状態になりやすいです。表面上はなんとか回しているように見えて、内側はずっと全力疾走。気づいたら朝起き上がれない、ということも起こります。この「疲れやすさ」の正体については、発達障害で仕事が疲れやすい5つの原因と対策で詳しく書きました。
ここまで読んで、「ああ、自分のことだ」と感じた方もいるかもしれません。では、その働きづらさに対して、診断を待たずに今できることは何か。次から具体的に見ていきます。
「診断を受けるべきか」で悩んで、その結論が出るまで何も動けない、という人は多いです。でも、診断の有無に関係なく、今すぐ着手できることがあります。
病名がなくても、困りごとを具体的に書き出すことはできます。むしろ、これが一番効きます。
場面 | 自分の困りごとを書き出す(例) |
|---|---|
集中できる時 | 一人で没頭できる作業/興味のあるテーマ |
集中が切れる時 | 長い会議/同時並行のタスク/騒がしい場所 |
ミスが出やすい時 | 口頭だけの指示/急な予定変更 |
続いた仕事 | データ入力/コードを書く作業 |
すぐ辞めた仕事 | 電話中心の業務/何でも屋的な役割 |
これをやると、「自分は能力が低い」ではなく「合わない環境にいただけ」だと見えてくることがあります。僕の場合、「対面の即興コミュニケーションが苦手」「テキストで非同期にやり取りできると一気に成果が出る」とハッキリしたのが、その後のキャリアの分かれ目になりました。
グレーゾーンの方にとって、何の仕事かよりも、どう働くかのほうが続けやすさを左右します。
求人を見るときは、仕事内容の欄だけでなく「働き方」の条件を重点的にチェックしてみてください。自分の特性を活かせる方向性を探したい方は、発達障害の特性を活かせる職種15選|強みを仕事に変える適職ガイドが参考になります。
転職の前に、まず今いる場所でできる調整もあります。たとえば、口頭指示をその場でメモして復唱する、タスクを一つずつ可視化する、集中できる時間帯に重い仕事を寄せる、など。診断がなくても、「自分が成果を出しやすいやり方」として上司に提案するのは十分可能です。事務職での具体的な工夫は発達障害でも事務職で活躍できる|ADHD・ASDの特性を活かす仕事術と職場選びのコツにまとめています。
それでも限界を感じるなら、無理に粘り続ける必要はありません。「合わない場所で頑張り続ける」より、「合う場所を探す」ほうが、結果的にラクになることは多いです。
ここが、多くの方が一番知りたいところだと思います。結論から言うと、現状のグレーゾーン(診断・手帳なし)では、障害者雇用枠は原則使えません。ここは正直にお伝えします。
障害者雇用枠で働くには、原則として障害者手帳(発達障害の場合は精神障害者保健福祉手帳)が必要です。手帳がないと、求人に応募する段階で要件を満たせません。手帳のメリット・デメリットや取得の判断材料は障害者手帳のメリット・デメリット|発達障害で取得を迷っている方への完全ガイドで整理しています。
つまり、障害者雇用で配慮を受けながら働きたい場合は、その前に「受診→診断→手帳取得」というステップが必要になります。これは時間も心の準備もかかる選択なので、急いで決める必要はありません。診断を受けるかどうかで迷っている方は、発達障害の診断を受けるべきか|エンジニアとしてのメリット・デメリットを読んでから考えてみてください。
ここは、意外と知られていない大事なポイントです。
障害者雇用枠と違って、就労移行支援は障害者手帳がなくても利用できる場合があります。
就労移行支援を使うには「障害福祉サービス受給者証」が必要ですが、この受給者証は手帳がなくても申請できます。医師の診断書や意見書があれば申請の根拠になり、はっきりした診断名がつかないグレーゾーンの状態でも、医師が「就労に困難が見込まれ、支援が望ましい」と判断すれば利用が認められるケースがあります(最終的な可否はお住まいの市区町村の障害福祉窓口の判断によります)。
この点はミラトレノートの解説記事などでも確認できます。気になる方は、お住まいの自治体の障害福祉窓口に問い合わせてみるのが確実です。
就労移行支援そのものの仕組みを先に知りたい方は、就労移行支援とは?発達障害者が利用するメリットとおすすめ事業所の選び方を参考にしてください。
「働きたいけど、いきなり転職に踏み切る自信がない」「まずスキルや生活リズムを整えてから動きたい」という方には、こうした支援を入り口にする道があります。
たとえば在宅で自分のペースで学びたいなら、在宅訓練に対応した就労移行支援という選択肢があります。
在宅でITスキルを学べる就労移行支援を無料で見学してみる →
AI・データ分野に興味があるなら、その領域に特化した支援もあります。
AI・データサイエンスに強い就労移行支援を無料で相談する →
「就労移行支援=手帳がある人だけ」と思い込んで選択肢から外している人が多いのですが、まずは窓口に聞いてみる価値があります。利用は無料〜低額(前年の世帯所得により自己負担額が決まり、多くの方が無料)です。
もうひとつ知っておくと安心なのが、地域若者サポートステーション(サポステ)です。これは厚生労働省の事業で、働くことに悩みを抱える原則15〜49歳の方が対象。診断の有無を問わず、無料でキャリア相談を受けられます。「いきなり民間サービスはハードルが高い」という方の最初の一歩に向いています。
ここまでを踏まえて、今のあなたの状況別に、現実的な進め方を整理します。
診断や手帳を取るつもりはなく、一般雇用の中で自分に合った環境を選びたい、という方。これは十分に現実的な道です。
ポイントは、面接で「発達障害です」と無理に言う必要はない、ということ。診断がないなら、なおさらです。代わりに、苦手を「得意の裏返し」として伝えると、特性を強みとして提示できます。
「マルチタスクより、一つの業務に集中して正確に仕上げるのが得意です」 「口頭よりテキストでのやり取りのほうが、抜け漏れなく進められます」
この「働き方ベースの伝え方」の詳しい型は、すでに公開している発達障害グレーゾーンの転職ガイド|診断なし・手帳なしでも自分に合った仕事を見つける方法に、面接の言い換え例やステップを細かくまとめています。あわせて読むと、転職活動の進め方まで一気通貫でイメージできます。
なお、将来的に診断・手帳を取得した場合は、障害者雇用という選択肢も加わります。そのときは発達障害の特性を理解した専門エージェント(dodaチャレンジやatGPなど)に相談する道も開けますが、今すぐの話ではないので、ここでは「将来の選択肢」として頭の片隅に置いておくくらいで十分です。
正直に言うと、僕がグレーゾーンの方に一番すすめたいのがこの道です。
理由はシンプルで、IT職は「成果物で評価される」「リモートやフレックスが多い」「テキストコミュニケーションが標準」という、グレーゾーンの特性と相性のいい条件がそろいやすいからです。僕自身、対面の即興が苦手でも、コードという成果物で勝負できるようになってから、働きづらさが激減しました。診断や手帳の有無は、一般雇用のIT転職ではほぼ関係ありません。
すでにエンジニア・IT職としての経験があり、キャリアアップや年収アップを狙うなら、IT特化の転職支援を使うのが近道です。
「一般枠でIT転職したいが、まだ手探り」という段階なら、IT職種に完全特化した@PRO人(アットプロジン)のような、相談の質を重視したエージェントが合います。IT転職の全体像はADHD向けIT・エンジニア転職完全ガイド2026も参考にしてください。
未経験からITを目指すなら、まずはスキルを身につけるところから。個人レッスンで質問しながら学べるWinスクールのような選択肢もあります。
「正直、今は転職どころじゃない」「まず生活リズムや自信を取り戻したい」という方。これも、まったく問題ありません。むしろ、無理に動かないことが正解の時期もあります。
このケースでは、前述の就労移行支援(手帳なしでも利用できる可能性あり)やサポステを入り口にするのが現実的です。「また辞めてしまうかも」と続かなさに不安がある段階なら、発達障害で転職を繰り返す人の職場定着マニュアルも合わせて読むと、焦らず次の一歩を選べると思います。
ここまでの選択肢を、ざっくり整理しておきます。どれが正解ということはなく、今の自分の状態に一番フィットするものを選んでください。すべて無料で相談・見学できます。
今のあなたの状況 | 向いている入り口 | 特徴 |
|---|---|---|
IT経験あり・キャリアを伸ばしたい | エンジニア特化、リモート・高年収求人に強い | |
未経験からITスキルを身につけたい | 個人レッスン、未経験からの就職実績多数 | |
在宅で自分のペースで学びたい | 在宅訓練OK、eラーニング中心。手帳なしでも相談可 | |
AI・データ分野に挑戦したい | AI・データサイエンス特化の就労移行支援 |
どれも、まず話を聞くだけ・見学するだけでも大丈夫です。「自分の状況でも使えるか」を確認するつもりで、気軽に問い合わせてみてください。手帳の有無が不安なら、その点を最初に聞いてしまうのが早いです。
最後に、この記事の要点をまとめます。
僕がグレーゾーンの時期に一番ほしかったのは、「あなたのその働きづらさは、気のせいでも甘えでもない」という一言でした。だから、もし今あなたが同じように悩んでいるなら、まずそれを自分に言ってあげてほしいです。
病名がつくかどうかより、目の前のしんどさをどう軽くするか。そのために動ける選択肢は、思っているより多くあります。今日できる小さな一歩から、始めてみてください。
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この記事を書いた人 ADHDと診断されたフロントエンドエンジニアです。診断を受ける前の数年間、自分が何に困っているのか分からないまま「グレーゾーン」の状態で働きづらさを抱えていました。地方でフルリモート勤務、年収1200万。同じように悩む方が、少しでもラクに働ける選択肢を見つけられたらと思って書いています。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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