「また不採用か……」
応募して、書類で落ちる。面接まで進んでも、お祈りメールが届く。それが何度も続くと、だんだん「自分という人間そのものが、社会から要らないと言われている」ような気がしてきますよね。
僕はADHDと診断されたエンジニアですが、過去に転職活動でうまくいかなかった時期があって、その感覚は痛いほどわかります。朝、求人サイトを開くのもしんどい。返信が来るたびに心臓が縮む。あの不採用通知を見る瞬間の、胃が落ちるような感じ。
でも、最初にこれだけは伝えさせてください。発達障害で仕事が決まらないのは、あなたの価値が低いからではありません。受からない理由のほとんどは、「伝え方」「応募先とのミスマッチ」「準備」「求人の絶対数」といった、対処できる要素です。
この記事では、障害者雇用で受からない・採用されないときに考えられる5つの原因を一つずつ整理して、そこから「次に何をすればいいのか」という具体的な打ち手まで、当事者の目線でお話しします。読み終わるころには、闇雲に応募を続けて消耗するのではなく、内定に近づくための現実的な道筋が見えているはずです。
まず、つらい気持ちを少し軽くするところから始めさせてください。
応募が通らないと、人は原因を「自分の人格」や「障害そのもの」に求めがちです。「コミュニケーションが苦手な発達障害だから、どこも雇ってくれないんだ」と。僕自身、不採用が続いたときは本気でそう思い込んでいました。
でも実際は、採用の合否は「あなたという人間の総合評価」ではありません。その求人が求めている条件と、あなたが提示した情報が、そのとき噛み合ったかどうか。それだけの話です。同じあなたでも、応募先や伝え方が変われば結果は変わります。
しかも、いまは制度的にも追い風が吹いています。民間企業の障害者の法定雇用率は2024年4月に2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へと上がる予定です(厚生労働省の資料)。雇用義務の対象となる企業の範囲も従業員40人以上から37.5人以上へ広がります。つまり、企業側は「障害のある人を採用したい・しなければならない」という方向に動いていて、求人の母数そのものは増えているのです。
加えて2024年4月からは、民間企業にも障害のある人への合理的配慮の提供が法的義務になりました(政府広報オンライン)。これまで努力義務だったものが義務化されたわけで、配慮を前提に働ける環境は整いつつあります。
それでも受からないとしたら、原因は別のところにあります。次の章で、その「別のところ」を5つに分けて見ていきましょう。
ここで一つだけ。「もう一人で応募を続けるのは限界かも」と感じている方は、後半で紹介する障害者専門の転職エージェントに、状況を話すだけでも気持ちが整理されます。無料で使えるので、頭の片隅に置いておいてください。
ここからが本題です。障害者雇用で落ちる、採用されないときに考えられる原因を、よくあるものから順に5つ挙げます。自分に当てはまるものはどれか、チェックしながら読んでみてください。
発達障害の採用でいちばん多いのが、これだと感じています。
企業の採用担当は、あなたの特性そのものを怖がっているわけではありません。怖いのは「何に困るのか、どう配慮すれば戦力になるのかが、わからない」状態です。求人サイトの調査でも、障害特性が見えにくく、指示を出す側のコミュニケーションコストが読めないことが採用のハードルになる、という指摘があります(就労継続ナビ)。
たとえば、こんな伝え方をしていませんか。
「マルチタスクが苦手です。口頭の指示だと忘れてしまうことがあります」
これだけだと、企業は「で、うちでどう働けるの?」と不安になります。一方で、こう言い換えるとどうでしょう。
「複数の作業を同時に進めるとミスが出やすいので、タスクは一つずつ順番に進める形だと安定して成果を出せます。口頭の指示はメモやチャットで残していただけると、抜け漏れなく対応できます」
伝えている特性は同じです。でも後者は「困りごと」を「こうすれば働ける」という運用方法に翻訳しています。採用担当が知りたいのはまさにこれです。
配慮事項の伝え方は合否を大きく左右するので、別記事で例文つきの完全ガイドにまとめています。書類や面接の前に一度目を通しておくと、伝え方がぐっと整理されますよ。
あわせて読みたい:発達障害を面接で伝える完全ガイド|配慮事項の上手な伝え方
次に多いのが、そもそも噛み合っていない求人に応募し続けているケースです。
たとえば、電話応対が中心の事務職に、聴覚情報の処理が苦手なASD(自閉スペクトラム症)の方が応募する。来客対応の多い受付に、予測できない対人状況が苦手な方が応募する。本人のスペックは高くても、その職場で求められる動き方と特性が真逆だと、面接でどうしても歯切れが悪くなり、お互いに「合わなそう」という空気になります。
これは「能力がない」のではなく「相性の問題」です。受からないことが続くなら、応募先のリストそのものを疑ってみる価値があります。
あのとき僕も、人と頻繁に調整が必要なポジションばかり受けて全滅していました。あとから「最初から非同期で進む開発寄りの仕事に絞っていれば」と何度も思いました。
自分の特性がどんな仕事と相性がいいのかは、一人で考えると視野が狭くなりがちです。第三者に客観的に整理してもらうと、思わぬ適職が見えてくることがあります。
身も蓋もない話ですが、ここでつまずいている人も少なくありません。
障害者雇用の書類選考の突破率は7〜10%程度とも言われており、決して甘くはありません(障害者雇用Labの整理による)。志望動機が使い回しのテンプレートだったり、職務経歴が「何ができる人なのか」伝わらない書き方だったりすると、特性以前のところで落ちてしまいます。
面接も同じです。「配慮事項を聞かれたらどう答えるか」を準備せずに本番に臨むと、その場で言葉に詰まり、結果として「自己理解が浅い人」という印象になってしまう。採用側が知りたいのは、自分の特性を理解して、自分で対処の工夫ができる人かどうかです(しゅうぷらの解説より)。
ここまで読んで、思い当たる節はありませんか。書類と面接は、準備すれば確実に伸ばせる領域です。
これは本人の努力ではどうにもならない、構造的な原因です。
「在宅勤務で、通院に配慮があって、年収もこのくらいで、勤務地はこのエリア」——条件を重ねるほど、該当する求人の数は一気に減ります。地方在住だとなおさらです。母数が10件しかなければ、どれだけ準備が完璧でも、内定が出る確率は単純に低くなります。
このタイプの「受からない」は、応募先を変えるのではなく探せる求人の数を増やすことでしか解決しません。一般に公開されている求人だけを見ていると、そもそも選択肢が足りていない可能性があります。
実は、障害者雇用には一般には出回らない「非公開求人」が多く存在します。企業が配慮を前提に静かに採用したいケースや、ミスマッチを避けるため最初からエージェント経由でしか出さないケースです。非公開求人は丁寧にマッチングされたうえで紹介されるため、応募できた時点で採用につながりやすい、という性質もあります(dodaチャレンジの解説)。母数が足りていない人ほど、ここを開けるかどうかが効いてきます。
最後は、応募の「土台となる戦略」がそもそもズレているケースです。
障害を開示して働く「オープン就労」と、開示せず一般雇用で働く「クローズ就労」。どちらが正解ということはなく、人によって最適解は違います。ただ、障害者雇用枠(オープン)に応募するには原則として障害者手帳が必要です。手帳を持っていない、あるいは申請中の段階で障害者雇用に応募して、要件で弾かれているケースもあります。
逆に、配慮が必要なのにクローズで一般枠に挑み続けて、面接で特性が見透かされて落ちる、というパターンもあります。発達障害を隠して就職した場合の1年後の定着率は3割程度にとどまるというデータもあり(就労継続ナビ)、仮に受かっても続かないリスクが残ります。
「受からない」の裏側で、開示の方針や手帳の有無といった前提条件が、自分の状況と噛み合っていないことは意外と多いのです。オープンで行くべきか、手帳を取るべきか——この方針の整理こそ、次に紹介するエージェントとの相談がいちばん役に立つところでもあります。
ここまで5つの原因を見てきましたが、現実にはこれらが単独で起きていることはまれです。
「準備不足(原因3)のまま、相性の悪い求人(原因2)に、母数の少ないエリア(原因4)で応募し続けている」——こんなふうに複数が重なって、結果として「何をやっても受からない」状態になっていることがほとんどです。
だからこそ、一人で「自分のどこが悪いんだろう」と原因探しをしても、なかなか答えにたどり着けません。落ち込むだけで、空回りしてしまう。僕自身、原因を自分の内側にばかり探して、ずいぶん遠回りをしました。
ここで効くのが、外部の客観的な視点です。次の章では、消耗を減らしながら内定に近づく具体的な打ち手を整理します。
原因がわかったら、あとは打ち手です。受からない状況を変えるために、現実的で再現性のある方法を3つ紹介します。
いちばん効果が大きいのが、これです。
障害者専門の転職エージェントは、これまで見てきた原因のうち1・2・3・4をまとめて解決してくれる存在です。具体的には、
しかも、企業との間にアドバイザーが入り、あなたの特性や必要な配慮を企業側へ適切に伝えてくれます。自分の口で「マルチタスクが苦手で……」と説明するより、第三者が「この方はこういう環境なら高い成果を出します」と橋渡ししてくれたほうが、企業の受け取り方が変わるのは想像できますよね。条件に合わない求人は最初から紹介されないので、無駄に応募して落とされる回数も減ります(dodaチャレンジの解説)。
正直に言うと、僕は障害者雇用枠を使ったことはなく、一般枠のエンジニア転職で勝負してきた人間です。だから「エージェントを使えば絶対受かる」と無責任なことは言えません。それでも、一人で求人サイトと睨み合って消耗していたあの時期を思うと、伴走してくれる誰かがいるだけで、活動の心理的負担はまったく違っただろうと思います。受からなくて気持ちがすり減っている人にこそ、まず使ってほしい選択肢です。
利用は無料です。「いきなり転職を決めなくていい、まず話を聞いてもらうだけ」というスタンスで使えるので、応募に疲れてしまった人ほど、相談のハードルは低く考えて大丈夫ですよ。
それぞれのサービスの実際の評判が気になる方は、こちらもどうぞ。
あわせて読みたい:dodaチャレンジの評判は本当? / atGPの評判・口コミ徹底分析
これは意外と知られていないコツです。
エージェントによって、保有している求人も、担当者との相性も違います。1社だけだと「紹介できる求人がいまありません」で止まってしまうことがありますし、担当者と話が噛み合わないこともある。これは担当者ガチャの問題で、あなたのせいではありません。
だから、最初から2〜3社に登録しておくのがおすすめです。求人の母数(原因4)を増やせるうえに、複数の担当者の意見を聞き比べることで、自分の特性や適職への理解も深まります。「A社の担当はこう言ったけど、B社の担当は別の見方をしていた」——その差分から見えてくるものが、けっこうあります。
どのエージェントがあるのか全体像を知りたい方は、比較記事を用意しています。
あわせて読みたい:発達障害向け転職エージェント7社比較
「いま応募しても受かる気がしない」「体調が安定していなくて、働くイメージが持てない」——そんな段階なら、無理に応募を続けるより、いったん土台を整えるという選択肢があります。
就労移行支援は、障害のある人が一般就労を目指して、生活リズム・スキル・対人面のトレーニングを受けられる福祉サービスです。職業訓練だけでなく、履歴書の添削や面接練習、職場ルールの指導まで受けられます。ここで「安定して通えた」「課題に取り組めた」という実績そのものが、面接で語れる強みになります。
受からない原因が「準備不足」や「体調・生活リズムの不安定さ」にあるなら、ここを固めてから再挑戦したほうが、結果的に近道になることも多いです。焦って空回りするより、急がば回れです。
就労移行支援のしくみや向き不向きは、こちらで詳しく解説しています。
あわせて読みたい:就労移行支援とは?
念のため、お金をかけずに使える公的な支援にも触れておきます。
ハローワークには障害のある人専門の「専門援助部門」という窓口があり、専門知識を持つ相談員が求人紹介から就職後の定着支援まで対応してくれます(厚生労働省・政府広報)。また「障害者トライアル雇用」という制度を使えば、原則3か月の試用期間を経てから本採用に進む形で働き始められ、お互いのミスマッチを減らせます。実際にトライアルを終えた人の多くが常用雇用へ移行しているとされており、いきなり本採用よりハードルが下がります。
エージェントが民間の伴走型なら、ハローワークは公的で地域密着型です。どちらが上ということはなく、併用するのがいちばん賢い使い方です。「全部を一度に使うのは無理」という方は、まず話を聞いてもらいやすいエージェント1社から、で十分だと思います。
ここまで、受からない原因と次の打ち手を見てきました。最後に、心の話を少しだけ。
不採用が続くと、自己肯定感がどんどん削られていきます。「自分はどこにも必要とされていない」という思考に飲み込まれそうになる。でも、その状態で出した自己評価は、たいてい実態より厳しすぎます。あなたは壊れているのではなく、合う場所にまだ出会えていないだけです。
無事に内定が出たあとは、今度は「続けられるか」という次のテーマが待っています。そこでつまずかないために、定着のコツをまとめた記事も置いておきます。受かった先の安心材料として、いまのうちに読んでおくのもいいかもしれません。
あわせて読みたい:ADHDで仕事が続かない原因と対策
そして、もし気持ちがすり減っているなら、その状態のままさらに応募を重ねるより、一度プロに状況を預けてみてください。次の章で、相談先を整理しておきます。
「応募しても受からない」「自分に合う職場の見つけ方がわからない」「特性をどう伝えればいいかわからない」
その悩みは、あなた一人で抱え込むものではありません。発達障害の特性を理解した障害者専門の転職エージェントに相談すれば、配慮事項の言語化から求人選び、書類・面接対策、企業への橋渡しまで、まるごと伴走してくれます。何より、非公開求人を含めて選択肢が一気に広がります。
1社だと求人や担当者との相性に左右されるので、下の2社あたりを併用して、合うほうをメインに使うのがおすすめです。どちらも無料です。
サービス | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
障害者雇用の求人数が業界最大級。発達障害に詳しいアドバイザーが在籍 | まず選択肢の母数を増やしたい方 | |
障害者転職支援の実績が豊富。定着まで見据えた手厚いサポート | じっくり伴走してほしい方 |
どちらも登録・相談は無料です。いきなり転職を決める必要はありません。まずは「いまの状況を話して、客観的な意見をもらう」つもりで使ってみてください。
最後に、この記事の要点を整理します。
不採用が続くと、世界に拒まれているような気持ちになります。その気持ちは本物だし、無理に「前向きになろう」とは言いません。ただ、やり方を少し変えるだけで景色が変わることは、本当にあります。今日のあなたにできるいちばん小さな一歩は、求人サイトをもう一度開くことではなく、誰かに状況を話してみることかもしれません。あなたが合う場所にたどり着けることを、心から願っています。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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