
「特性は正直に書いた。でも、また書類で落ちた」
「障害者雇用に切り替えたら、配慮事項の欄に何を書けばいいのかわからない」
「自分の弱みばかり目立つ職務経歴書になってしまう」
転職活動で書類選考を何度も突破できないと、自分そのものが否定されたような感覚に陥ります。運営者自身もADHD(注意欠如・多動症)と診断されたフロントエンドエンジニアで、過去に職務経歴書を出しても出しても通らない時期がありました。当時は「経歴が短いせいだ」と思い込んでいたのですが、後から読み返してみると、書類の構成そのものに問題があったと分かります。
職務経歴書は「過去の業務一覧」ではなく、「採用担当に、私を雇うとどんないいことがあるかを30秒で伝える営業資料」です。発達障害(ADHD/ASD)のある方の場合、ここに「配慮事項」という独自の難所が加わります。書きすぎても引かれ、書かなさすぎても入社後にトラブルになる。このバランスをどう取るかが、書類選考通過率を大きく左右します。
この記事では、
を、運営者の実体験と公的データを基に整理してお伝えします。読み終わるころには、明日から職務経歴書のどこを直せばいいかが具体的に見えているはずです。
転職活動全体の戦略を俯瞰したい方は、まず発達障害者にとってフルリモートは天国だった件も合わせて読むと、職場選びの土台が整います。
発達障害の職務経歴書とは、ADHD・ASDなどの特性を持つ求職者が、自分の業務経験・スキル・成果に加えて、配慮事項(職場で必要なサポート)と自己対応(自分でできている工夫)を1〜2枚のA4にまとめた応募書類です。一般枠と障害者雇用枠で求められる情報量が異なり、特に障害者雇用枠では「特性を理解しているか」「自己管理できているか」が、スキル以上に重視されます。
書類選考が通らない理由は、職務経歴の弱さよりも「書き方」に原因があることが多いです。運営者が当時を振り返って気づいた3つの落とし穴を整理しておきます。
「静かな環境を希望します」「マルチタスクは避けてください」だけが羅列されていると、採用担当には「この人は受け身で、配慮しないと働けない人」という印象が残ります。これは情報量の問題ではなく、書き方の構造の問題です。
採用担当はあなたを採用したあと、社内で「この人を雇うとこういうリターンがあります」と説明する立場にあります。配慮事項がお願いだけで構成されていると、その説明資料として使えないのです。
「販売、レジ、品出し、棚卸し」のような単語の羅列で終わってしまうと、採用担当はあなたが何を得意としているのかを推測しなければなりません。書類選考の現場で1枚あたり数十秒しか読まれない以上、推測する余地を残した時点で落とされます。
「事務経験5年」ではなく「月次決算補助、経費精算処理(月500件)、Excelマクロによる集計自動化を担当」のように具体化することが重要です。
発達障害のある方の経歴には、ブランクや短期離職が含まれることがあります。これ自体は珍しくないのですが、説明を省略すると採用担当は「また同じ理由ですぐ辞めるのでは」と推測する以外にできることがありません。
運営者の場合、最初の会社を体調不良で離れていた期間がありましたが、最初の職務経歴書ではその空白を完全に無視して書いていました。後で転職エージェントの担当に「ここを説明しないのは、自分から落としにいっているのと同じです」と言われ、深く反省したのを覚えています。
「障害をオープンにするかどうか」を決めかねている方も多いと思います。職務経歴書のレベルで何が変わるのかを整理すると、判断しやすくなります。
項目 | 一般枠(クローズ就労) | 障害者雇用枠(オープン就労) |
|---|---|---|
障害の記載 | 不要(聞かれても答える義務なし) | 必須(障害名・等級・状態) |
配慮事項 | 書かない | 必ず記載 |
通院・服薬の記載 | 不要 | 簡潔に記載 |
強みの書き方 | スキル・実績ベース | スキル+特性の自己理解 |
求められる量 | A4 1〜2枚 | A4 2枚+「私の障害について」別紙 |
採用担当の関心 | パフォーマンス | パフォーマンス+定着 |
障害者雇用枠で書類選考が通過すると、一次面接以降の採用率は比較的高い傾向にあると複数の現場で言われています。書類が狭き門である一方、突破できれば次の段階に進みやすいということです。
障害者雇用枠そのものを検討中の方は、発達障害の障害者雇用完全ガイド|手帳取得・給与・転職の現実もあわせて読むと、書類の戦略と全体像が接続しやすくなります。
職務経歴書は「採用担当が知りたいこと」に答える書類です。何を知りたがっているかを先に把握すると、何を書くべきかが逆算できます。
ポイント | 採用担当が知りたいこと |
|---|---|
1. 業務内容の具体性 | 何を、どれくらいの量、どんな成果でやってきたのか |
2. 応募職種への適性 | 入社後、即戦力としてどこを担えるか |
3. 自己理解の深さ | 自分の特性をどこまで把握しているか |
4. 自己対応の工夫 | 困難に対して自分でどう対処しているか |
5. 必要な配慮の明確さ | どんなサポートがあれば力を発揮できるか |
6. ブランク・離職の理由 | 継続して働けるか、再発リスクはあるか |
7. 入社後のイメージ | 1年後、3年後に組織にどんな貢献ができるか |
特に「3. 自己理解」「4. 自己対応」「5. 必要な配慮」の3点セットが揃っているかどうかは、障害者雇用枠において合否を決定づける要素です。
ここからが本題です。「特性は事実、強みは見せ方」というのが、運営者がたどり着いた結論です。同じ特性でも、書き方の順序を変えるだけで採用担当に届く印象は大きく変わります。
最初のステップは、診断名や症状名のまま書かないことです。「ADHDです」と書かれても、採用担当が想像できる業務イメージは曖昧なままです。
翻訳前(NG) | 翻訳後(OK) |
|---|---|
ADHDのため不注意があります | 数字の転記作業では、ダブルチェックを行うことでミスを防いでいます |
ASDで対人コミュニケーションが苦手です | 雑談より、業務上の指示はチャット等の文字情報でいただけると確実に対応できます |
特性は環境次第でプラスにもマイナスにもなります。これは綺麗事ではなく、運営者の実体験です。オフィスでの電話対応はずっと苦手でしたが、リモート+テキストベースのエンジニア職に移ってからは、過集中や論理的思考が一気に武器に変わりました。
弱みの表現 | 条件付きの強みへの書き換え |
|---|---|
マルチタスクができない | 1つのタスクに深く集中し、完了率と精度を高める働き方を得意としています |
急な変更に弱い | 事前に方針が共有された環境で、計画的に高い品質を出すことができます |
雑談が苦手 | 業務に直結する論点では、要点を絞った正確なコミュニケーションが可能です |
「丁寧です」「正確です」だけでは説得力が出ません。証拠を1つ添えると、印象が変わります。
前職では、伝票処理を月600件担当し、ダブルチェック手順を自分で文書化することで、入力ミスを四半期で2件以下に抑えました。
数字が思い出せない場合は、「業務マニュアルを自作した」「○○の手順を後輩に引き継いだ」など、具体的なアクションでも十分です。
ここが多くの方がつまずくポイントです。書いてあるのが「お願い」だけだと採用担当は不安になりますし、「自分で全部対応してます」だけだと「じゃあ配慮いらないですね」と扱われてしまいます。
書き方の構造はこうです。
【困難】会議中の口頭指示が抜けやすい
【自己対応】議事メモをその場で取り、終了後に上長に確認している
【お願いしたい配慮】会議終了後にチャットで要点を共有いただけると、より確実です
困難 → 自己対応 → 必要な配慮、という三段構成にすると、採用担当には「この人は自分で動ける人だ」と伝わります。
同じ職歴でも、応募職種が変われば、強調する順番は変わります。データ入力系なら正確性、企画系なら発想力、エンジニア系なら過集中と論理性、というように、求人票のキーワードを読み込んで並び替えるだけで通過率が変わります。
運営者がフロントエンドエンジニアの求人に応募したとき、職務経歴書の冒頭3行を「過集中」「ドキュメント化が好き」「非同期コミュニケーションが得意」に書き換えたら、書類通過率が体感で大きく上がりました。これは応募職種に寄せた効果が大きかったと感じています。
ブランクや短期離職は「隠す」のではなく「説明する」が正解です。
2022年4月〜2023年3月:体調回復および特性理解のため療養。
期間中に主治医と相談し、ストレスマネジメントの方法を整理。並行して簿記2級を取得。
ポイントは、療養したという事実だけでなく、その期間にどう動いたか、何が変わったかをセットで書くことです。
職務経歴書の最後に、「貴社では、これまで培った◯◯と、適切な配慮環境のもとで、◯◯職として◯◯に貢献したいと考えています」という1段落を入れると、書類全体が「過去の話」から「未来の提案」に変わります。
書類選考の次は面接という関門です。書類と一貫した話ができるよう、発達障害を面接で伝える完全ガイドや発達障害の転職面接でよく聞かれる質問25選にも目を通しておくと安心です。
配慮事項は障害者雇用枠の書類の中で最も悩む欄です。NGとOKを並べると、違いが分かりやすいです。
静かな環境で働きたいです。マルチタスクは避けてください。電話対応は外してください。
採用担当の印象:「配慮の量が多く、こちらでどこまで対応できるか分からない」
周囲の音で集中が途切れやすい特性があります。普段はノイズキャンセリングイヤホンで対応していますが、集中作業の時間帯のみ、座席を窓際固定にしていただけると安定して成果を出せます。
ストレスに弱いので配慮をお願いします。
採用担当の印象:「具体的に何をすればいいか不明。判断材料がない」
突発的な業務変更があると、優先順位の判断に時間がかかることがあります。前日までに翌日のタスクリストをチャットで共有いただけると、当日のパフォーマンスが安定します。
10項目以上の配慮事項が並んでいると、採用担当は「全部に対応できる職場はない」と判断します。配慮事項は2〜3項目に絞り、本当に必要なものだけにすることが、結果的に通過率を上げます。
合理的配慮の制度的な背景については、厚生労働省の雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮が公式の情報源です。雇用領域では2016年4月施行の障害者雇用促進法で行政機関に義務化され、民間事業者については2024年4月施行の改正障害者差別解消法で法的義務に格上げされました。職場での配慮の実際の求め方は職場での合理的配慮の求め方完全ガイドが詳しいです。
書類選考は、1枚あたり数十秒で読まれる前提で設計します。読みやすさは内容と同じくらい大事です。
JEEDの障害者の就労支援に関する資料・ハンドブックでは、ナビゲーションブック(自分の取扱説明書)の作成様式が公開されています。職務経歴書とは別物ですが、配慮事項を整理する素材として使えます。
ここまで読んで、「自分一人で書ききれる気がしない」と感じた方もいるかもしれません。職務経歴書の添削は、障害者雇用に強い転職エージェントの担当者と一緒に作るのが最短ルートです。詳しくは発達障害向け転職エージェント7社比較を参考にしてみてください。
最後に、業種別の書き出しテンプレートをいくつか提示します。これを土台に、自分の経歴と特性に合わせて編集してください。
【職務要約】
中小企業の総務部で3年間、書類作成・備品管理・社内問い合わせ対応を担当しました。マニュアル化の手順を自作し、後任への引き継ぎ資料として活用されています。
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【特性と自己対応】
・ケアレスミス → 入力後にチェックリストで再確認する習慣を確立
・口頭指示の聞き漏れ → 重要事項はメモアプリに即時記録
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【希望する配慮】
・業務指示はテキスト(チャット・メール)でいただけると確実です
・優先順位の変更は、午前中までにご共有いただけると助かります
【職務要約】
受託開発企業でフロントエンドエンジニアとして2年、Webアプリケーションのコンポーネント設計・実装を担当しました。技術ブログを社内Wikiに毎月投稿し、チームの知識共有を主導しました。
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【特性と強み】
・興味のある技術領域への過集中 → 短期間での学習・検証が得意
・論理的な構造化 → ドキュメント化や設計レビューで力を発揮
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【希望する配慮】
・タスクは1日1〜2件に絞っていただけると、品質を担保しやすいです
・口頭での仕様変更は、後追いでチャットに残していただけると確実です
【職務要約】
食品工場で2年間、ライン作業・検品・在庫管理を担当しました。手順書通りの作業を高い精度で継続することを得意としています。
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【特性と強み】
・ルーティン業務への高い集中力と継続性
・手順の細部まで覚える記憶力と一貫した品質
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【希望する配慮】
・複数の作業を並行するシフトは避けていただけると安定します
・ライン変更が発生する際は、前日までに新しい手順書をいただけると助かります
オファー面談や最終面接で、書類に書いた内容と矛盾しないように話すコツは、発達障害の転職オファー面談ガイドと発達障害の最終面接突破ガイドにまとめてあります。
ここまで長く書いてきましたが、伝えたい一番大切なことはひとつだけです。職務経歴書は過去の業務リストではなく、「私を雇うと、あなたの組織にこういう価値が生まれます」という未来の提案書だ、ということです。
運営者自身、書き方を変えただけで書類通過率が体感で大きく変わりました。あなたの経歴は変えられませんが、見せ方は今日から変えられます。
最初の一通でうまく書けなくても大丈夫です。職務経歴書は何度でも書き直していい書類です。むしろ、何度も書き直すからこそ、自分の特性と強みへの理解が深まっていきます。
大事な注記: 本記事は当事者目線と公的情報を組み合わせた一般的なガイドです。書類の最終判断や合理的配慮の交渉は、必ず転職エージェントや主治医・産業医・専門家と相談してください。
職務経歴書を一人で書ききるのが難しいと感じたら、障害者雇用に強い転職エージェントに添削を依頼するのが一番の近道です。配慮事項の表現や強みの言い換えは、第三者の視点が入ると一気に伝わりやすくなります。
サービス | 特徴 | こんな方におすすめ |
|---|---|---|
障害者雇用の求人を幅広くカバー、発達障害理解のあるアドバイザーが在籍 | 選択肢を広げながら職務経歴書の添削を受けたい方 | |
障害者転職支援の実績が豊富、書類添削から定着支援まで一貫してサポート | 配慮事項の整理を丁寧に進めたい方 |
どちらも無料で利用できます。書類を1枚でも持って相談に行くと、添削の精度が上がります。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
運営者情報の詳細を見る発達障害(ADHD・ASD)で障害者雇用と一般雇用どっちを選ぶか迷う方へ。オープン就労とクローズ就労の違いを給料・配慮・定着率・キャリア・手帳要否の5軸で比較し、判断フローチャートとタイプ別の結論を当事者目線で解説。後悔しない選び方がわかります。
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