「障害者雇用はやめとけ」「障害者雇用にして後悔した」――検索窓にこの言葉を打ち込んだあなたは、たぶん今、申し込みボタンの直前で手が止まっていると思います。
僕も同じでした。ADHDと診断され、障害者手帳を取ったあと、「これを使って障害者雇用に切り替えるべきか」を半年くらい迷い続けました。結論から言うと、僕は今も一般雇用のままエンジニアを続けています。でもそれは「障害者雇用がダメだから」ではなく、僕の場合は一般枠のほうが条件が合っていただけの話です。
この記事では、障害者雇用が「やめとけ」「デメリットしかない」と言われる理由を、隠さず正直に検証します。そのうえで、後悔する人としない人、障害者雇用が向く人と一般雇用が向く人を整理します。読み終わるころには、「自分はどっちを選ぶべきか」の判断軸がはっきりしているはずです。
まず、ネガティブな声をごまかさずに並べます。実際、検索すると「デメリットしかない」「最悪だった」という体験談が山ほど出てきます。これらは決して的外れではありません。理由は主に5つです。
これは一番よく言われるポイントで、データ上もある程度事実です。
厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、発達障害者の1か月の平均賃金は約13万円でした。障害種別で見ると次のようになっています。
障害種別 | 1か月の平均賃金 |
|---|---|
身体障害者 | 約23.5万円 |
知的障害者 | 約13.7万円 |
精神障害者 | 約14.9万円 |
発達障害者 | 約13.0万円 |
(出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果」)
この数字だけ見ると、たしかに「安い」と感じますよね。正直、僕も最初にこれを見たときは少し怖くなりました。
ただ、この平均値には大きなカラクリがあります。発達障害者の雇用形態は「有期契約・非正規」が約37%と最も多く、さらに週20〜30時間といった短時間勤務の人もまとめて平均に入っています。フルタイム(週30時間以上)に絞ると平均は約15.5万円に上がります。つまり「障害者雇用だから一律に安い」のではなく、「短時間・非正規が多いから平均が下がっている」という構造なんです。
給料の話だけでもう少し詳しく知りたい方は、障害者雇用の給料は低い?平均年収データと発達障害者が収入を上げる5つの方法で、雇用形態別の内訳と収入アップの具体策をまとめています。
二つ目は、選べる仕事の幅です。障害者雇用枠の求人は、一般枠に比べると数が少なく、職種も事務補助・軽作業・データ入力などに偏りがちです。「自分のやりたい職種が障害者枠にはほとんどなかった」という声は本当によく聞きます。
特に専門職やマネジメント職を目指している人にとっては、ここが大きなストレスになります。僕がエンジニアの一般枠を続けている理由のひとつも、正直これでした。フロントエンドの実務求人は、障害者枠だとどうしても少なかったんです。
求人の偏りと地続きの話ですが、「だれでもできる仕事しか任せてもらえない」という後悔もよく出てきます。最初は配慮としてありがたかった軽めの業務が、半年・1年と経つうちに「自分は成長できているのか」という焦りに変わっていく。能力に対して仕事が物足りないと、これはこれでしんどいものです。
障害者雇用は、障害を企業に開示して働く「オープン就労」が前提です。配慮を受けられる反面、少なくとも人事や上司、場合によっては同僚にも障害があることが伝わります。「腫れ物に触るように扱われた」「気を使われすぎて逆に居づらかった」という体験談もあります。
逆に、障害を伏せて働きたい人にとっては、この一点だけで障害者雇用が選択肢から外れることもあります。障害を伝えずに働く選択については、発達障害のクローズ就労完全ガイド|障害を伝えずに働くメリット・デメリットと成功戦略で詳しく書いています。
最後に、期待値のギャップです。「障害者雇用なら理解してもらえる」と思って入ったのに、現場の理解が追いついておらず、結局しんどかった――というパターン。これは制度の問題というより、企業ごとの当たり外れが大きい領域です。
ここまで読んで、「やっぱりやめておこうかな」と思ったかもしれません。でも、ちょっと待ってください。これらのデメリットには、それぞれ回避策と、見落とされがちな誤解があります。
「障害者雇用はデメリットしかない」という言葉は強烈ですが、実態はもう少し複雑です。デメリットの裏側を冷静に見ていきます。
平均賃金が低めなのは事実ですが、それは「全障害者・全雇用形態の平均」です。正社員登用制度のある企業を選ぶ、フルタイムで働く、専門スキルを持って交渉する――こうした条件次第で、障害者雇用でも年収300万円台以上は十分に射程に入ります。実際、IT・専門職の障害者枠では、一般枠と遜色ない条件の求人も増えてきています。
「低い平均」をそのまま自分の天井だと思い込む必要はありません。
ここは正確に押さえておきたいところです。採用後の職場での合理的配慮は、もともと障害者雇用促進法で事業主の義務とされています。加えて2024年4月の改正障害者差別解消法により、事業者全般にも合理的配慮の提供が法的義務となりました(それ以前は努力義務)。つまり「配慮をお願いする」ことは、法律に裏づけられた正当な権利です。
合理的配慮とは、障害のある人が他の人と同じように能力を発揮できるよう、企業が過重な負担にならない範囲で行う調整のことです。たとえば、
こうした配慮を「わがまま」ではなく正当な権利として求められるのが、障害者雇用の大きな強みです。配慮の具体的な求め方は、あわせて読みたい記事として後ほど紹介します。
雇用率の話も知っておくと安心材料になります。企業に義務づけられる障害者の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ引き上げられ、2026年7月にはさらに2.7%へ引き上げられます。
つまり企業側は、これまで以上に障害のある人を採用しなければならない状況です。求人数が少ないという理由2のデメリットは、今後ゆるやかに改善していく方向にあると見ていいでしょう。
制度の数字は変わることがあります。最新の雇用率や配慮の範囲は、厚生労働省や各エージェントの公式情報で必ず確認してください。
ここまでで、デメリットには必ず裏側があるとわかってもらえたと思います。とはいえ、結局のところ大事なのは「自分にとって障害者雇用が合うかどうか」です。次の章で、その判断軸をはっきりさせます。
同じ障害者雇用でも、「最高の選択だった」と言う人と「やめておけばよかった」と言う人がいます。この差はどこから来るのか。体験談を読み込むと、いくつかの共通点が見えてきます。
特に最後の「企業をよく調べずに決めた」は、後悔の最大の原因です。障害者雇用は企業ごとの当たり外れが本当に大きい。配慮の手厚さも、任される仕事の幅も、入ってみないとわからない部分があります。だからこそ、ここを一人で乗り切ろうとしないことが大事だと実感しています。
僕の友人にも、一般枠で何度も体調を崩して退職を繰り返したあと、障害者雇用に切り替えて初めて2年以上同じ職場で働けている人がいます。本人いわく「給料は少し下がったけど、毎朝つぶれずに会社に行けることのほうが、自分には価値があった」と。これは数字には表れない、大きなメリットです。
ここまで読んで、「自分はどっちのタイプだろう」と思い当たる節はありませんか。次は、雇用形態そのものの向き不向きを整理します。
「障害者雇用 vs 一般雇用」は、どちらが上ということではなく、何を優先するかで答えが変わります。表で整理します。
比較項目 | 障害者雇用(オープン) | 一般雇用(クローズ含む) |
|---|---|---|
給料・年収 | 平均は低めだが企業選び次第 | 高めを狙いやすい |
求人・職種の幅 | やや限られる(拡大傾向) | 幅広い |
合理的配慮 | 受けやすい(企業の義務) | 受けにくい・自力対応 |
障害の開示 | 必要(周囲に知られる) | 不要にできる |
体調・定着の安定 | 安定させやすい | 自己管理の比重が大きい |
向いている人 | 安定・配慮・長期就労を優先 | 年収・キャリア・非開示を優先 |
ざっくり言えば、「安定して長く働くこと」を最優先するなら障害者雇用、「年収やキャリアの幅」「障害を伏せること」を優先するなら一般雇用、という分け方になります。
そして見落としがちなのが、これは「一生どちらか」を選ぶ話ではないという点です。まず障害者雇用で生活と体調を立て直し、実績を積んでから一般枠に挑戦する人もいれば、その逆もいます。今の自分の状態に合わせて選び直していい、くらいの気持ちで十分です。
両者の違いをもっと網羅的に知りたい方は、障害者雇用とは?一般雇用との違い|発達障害者が知るべきメリット・デメリットを徹底解説を読むと全体像がつかめます。また、そもそも障害者雇用に必要な手帳を取るべきか迷っている方は、障害者手帳のメリット・デメリット|発達障害で取得を迷っている方への完全ガイドもあわせてどうぞ。
ここからは実践です。「やめとけ」と言われる障害者雇用を、後悔しない選択に変えるためのチェックポイントを5つにまとめました。
「障害者雇用=単純作業」と決めつける前に、業務内容が具体的に書かれているかを見てください。職種名だけで判断せず、「どんな仕事を、どこまで任されるのか」を面談で必ず聞く。ここが曖昧な求人は、入社後のミスマッチが起きやすいです。
入社時の額面だけで判断しないこと。正社員登用制度があるか、昇給の実績はあるか。スタートが低くても、上がる仕組みがある会社を選べば、長期的な後悔は減らせます。
「障害のある社員が何年くらい続いているか」は、配慮の本気度がにじみ出る質問です。定着率の高い企業は、現場に配慮のノウハウが蓄積されています。
自分が何に困り、どんな配慮があれば力を出せるのかを、入社前に言葉にしておく。これは内定後の交渉でも、入社後の定着でも効いてきます。何をどう伝えればいいかは、エージェントに相談しながら整理していくと進めやすいです。
そして、ここが最重要です。求人票や口コミだけで企業の中身を見抜くのは、正直かなり難しい。配慮の実態、職場の雰囲気、過去の定着状況といった「外から見えない情報」は、その企業に多くの障害者を送り込んできた専門エージェントが一番握っています。
「障害者雇用で後悔した人」の多くは、この情報格差を埋めずに、一人で決めてしまった人です。逆に言えば、ここをプロに頼るだけで後悔の確率はぐっと下がります。
「障害者雇用にすべきか迷っている」「求人票だけでは企業の本当の配慮レベルがわからない」
そんなときは、発達障害者の就職・転職を専門に扱うエージェントに、無料で相談してみてください。表に出てこない「定着率」「実際の配慮の中身」「単純作業ではない求人」といった情報を持っているのが彼らの強みです。相談したからといって、必ず障害者雇用にしなければいけないわけではありません。「自分は一般雇用のほうが向いている」とわかるだけでも、十分に価値があります。
サービス | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
障害者雇用の求人数が業界最大級。発達障害専門のアドバイザーが在籍 | 求人の選択肢を広げて比較したい方 | |
障害者転職支援の実績No.1。入社後の定着支援も手厚い | 後悔しないよう手厚くサポートしてほしい方 |
どちらも無料で利用できます。「障害者雇用が自分に合うかどうか」を確かめる目的で、まずは話を聞いてみるだけでも大丈夫です。
最後に、この記事の要点を整理します。
「やめとけ」という言葉は、その人にとっては本当だったのかもしれません。でも、それがあなたにとっての正解とは限らない。デメリットを正しく理解したうえで、自分の物差しで選べば、後悔はぐっと減らせます。
もし「自分にはどっちが合うのか、もう少し情報がほしい」と感じたら、発達障害に理解のあるエージェントに相談したり、関連記事を読んだりしながら、納得できる選択をしてください。応援しています。
あわせて読みたい記事として、自分に合うエージェントを比較したい方は発達障害向け転職エージェント7社比較|ADHD・ASD対応【2026年版】もどうぞ。
この記事を書いた人
ADHDと診断されたフロントエンドエンジニアです。障害者手帳を取得していますが、自分の条件には一般雇用が合っていたため、地方でフルリモート勤務を続けています。障害者雇用・一般雇用のどちらかを持ち上げる立場ではなく、当事者として両方を見てきた視点で、できるだけ正直に書きました。
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。
社会人になってからADHDの診断を受けた当事者。地方在住でフルリモート勤務、年収800万円のフロントエンドエンジニア。転職5回の経験から、発達障害のある方のキャリア形成に役立つ情報を発信。
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